UC治療では、設定された治療目標を達成するための治療、すなわち"Treat to Target (T2T)"の概念が一般化し、STRIDE-IIにおいて提唱された「短期的には臨床的寛解」「中期的にはバイオマーカー的寛解」「長期的には内視鏡的治癒」を目指す診療が広がっています。そこで今回は、ハイボリュームセンターにおけるT2Tの実際について、内視鏡検査の実施頻度や各種バイオマーカーの活用法、治療強化のポイントなどを中心に解説いただき、併せてUCの寛解維持療法を含むGMAへの期待についてお話を伺いました。
慶應義塾大学病院は、日本におけるトップクラスのハイボリュームセンターとして全国から患者さんが集まる施設となっています。IBDに関して、2022年の外来通院患者数は、UC 2,382人 / CD 845人であり、今後も更に患者数は増加することが予想されます。当科では土曜日も含めて円滑な検査や治療を行っており、CDへのバルーン内視鏡小腸狭窄部拡張術なども速やかに施行可能となっています。そして、多くの受診患者数を背景として、臨床研究はもとより、基礎の病態探究に至るまで幅広い研究が実施されています。
このように患者さんの背景や希望に応じた治療を行いながら、その一方で、設定された治療目標を達成するための治療、すなわちゴールドスタンダードとされるSIRIDE-II3)に則った "Treat to Target (T2T)"も併せて遂行していくことが望まれます。この点もIBD専門医の責務であり、患者さんの自覚症状が改善されても腸管の炎症は残存しているような乖離が生じた場合、患者さんへ治療継続の意義を十分説明し、理解を得ることが求められます。
1) Sujino, T., London, M. et al.:Science. 2016;352(6293):1581-1586. 2) Yoshimatsu, Y., Sujino, T. et al.:Cell Rep. 2022;39(6):110773. 3) Turner, D. et al.:Gastroenterology. 2021;160(5):1570-1583. 4) 小林 拓:日本消化器病学会雑誌. 2021;118(3):229-234. 5) Takabayashi, K. et al.:Dig Endosc. 2023;doi:10.1111/den.14628. 6) 下山 孝 ほか:日本アフェレシス学会雑誌 1999;18(1):117-131. (利益相反:本研究はJIMROの資金提供を受けて行われた。) 7) 承認時評価資料:潰瘍性大腸炎の寛解維持に対する血球成分除去療法の有効性の検討 8) Naganuma, M. et al.:J Gastroenterol. 2020;55(4):390-400. (利益相反:本研究はJIMROからアダカラムの提供を受けて行われた。) 9) Motoya, S. et al.:BMC Gastroenterol. 2019;19(1):196. 10) Iizuka, M. et al.:World J Gastroenterol. 2021;27(12):1194-1212. 11) Fukuchi, T. et al.:J Clin Biochem Nutr. 2022;70(2):197-204. 12) Nomura, E., Sujino, T. et al.:Dig Dis Sci. 2021;66(9):3141-3148. 13) Ishikawa, K. et al.:Gastroenterology. 2022;163(5):1391-1406. 14) 柏木 伸仁:日本アフェレシス学会雑誌. 2011;30(1):39-47. (利益相反:本研究の著者はJIMROの社員である。)