富山県アダカラム
インタビュー記事シリーズVol. 6
UC治療における薬物療法の変遷とGMAに期待される役割
富山県立中央病院 消化器内科
部長
松田 耕一郎 先生
近年のUC治療は、様々な新薬の登場により大きな進歩を遂げましたが、それら新薬も単剤では効果に限界があるのも実情です。今回は、UC治療の基本とされるステップアップ療法の重要性と、その中でGMAに期待される役割についてお話を伺いました。
医療関係者の方へ
アダカラムインタビュー記事シリーズ
全国の先生方より、消化器および皮膚領域における最新の診療状況を踏まえた上で、様々な視点から顆粒球吸着療法(GMA)の日常診療における活用方法や工夫、メリットや課題についてお話いただきます。
IBD:炎症性腸疾患、UC:潰瘍性大腸炎、CD:クローン病、PP:膿疱性乾癬、PsA:乾癬性関節炎(関節症性乾癬)
※先生のご所属先および役職、治療指針等は掲載時点の情報です
富山県立中央病院 消化器内科
部長
松田 耕一郎 先生
近年のUC治療は、様々な新薬の登場により大きな進歩を遂げましたが、それら新薬も単剤では効果に限界があるのも実情です。今回は、UC治療の基本とされるステップアップ療法の重要性と、その中でGMAに期待される役割についてお話を伺いました。
富山県立中央病院は、県内における唯一の県立総合病院であり、炎症性腸疾患(IBD)診療の基幹施設の役割を担っている。2020年現在、潰瘍性大腸炎(UC)約250例、クローン病(CD)約100例の診療を行っている。
富山県立中央病院の消化器内科では、2016年より内視鏡診療の全例に録画システムを導入し、その有用性についてリスクマネジメントを中心に報告している1)。この点について、松田先生は『下部内視鏡は、IBD診療においてきわめて重要な検査ですが、稀ではあるものの、穿孔などの偶発症の発生に備える必要があります。例えば、録画システムを導入していれば、検査中に穿孔が生じた際に録画を検証することによって、穿孔部位の速やかな特定が可能となり、重篤化の防止にも繋がります。
また、高度な技術が求められる大腸ESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)などの録画映像を数多く共有することで、偶発症が発生しやすい状況の抽出が可能となり、発生頻度の低下も期待されます。』と述べられた。
富山県立中央病院は、新薬の治験に対して積極的に取り組んでおり、IBD関連の治験にも継続的に参加している。また、病診連携先の施設より、様々な病態を示すIBD患者の紹介を受け入れている。このように豊富な臨床経験を基として、現在のUC治療について松田先生は『近年、IBDの診断法や認知度の向上によって早期診断が可能となり、特にUCにおいては、軽症から中等症の割合が顕著に増加している印象があります。また、高齢発症および若年発症から高齢に移行した高齢者IBDも増加しており、年齢を考慮した治療方針の策定が強く求められています。
新薬の登場により、治療の選択肢は広がったのですが、UCに関する基本的な治療戦略は、現在でもステップアップ療法が一般的です。すなわち基本治療を十分検討した上で、次の選択肢を考慮すべきであり、実際に5-ASA製剤を増量しただけでコントロールが得られるUCも少なくありません。特に生物学的製剤(Bio)に関しては、重要な選択肢として将来に向けて温存する方が、長期にわたるUC治療において、安全性や効果減弱(LOR)の面から患者利益の向上に寄与するのではないかと考えます。
Bioは、比較的新しい薬剤が多いことから、十年単位の長期使用において、どのような事象が発生するか、十分に解明されていないのも実情です。実際にBioの発売当初、結核や日和見感染などの感染症および投与時反応に対する注意喚起が行われていましたが、実臨床での使用経験を重ねるにつれて、乾癬などのパラドキシカル反応が新たな課題として浮き彫りになってきました。Bioは画期的で、IBD治療を飛躍的に発展させた薬剤ですが、今後も安全性を注意深く観察していく必要があります。
また、たとえBioでも単剤での寛解導入には限界があるため、現在のUC治療においては、ステップアップ療法を念頭に置いて、様々な選択肢を組み合わせながら、粘膜治癒を目指す寛解導入療法が望まれています。』と解説された。
2000年にUCに対する保険適用となったGMAは、20年に及ぶ臨床経験によって、安全性の面から一定の評価を得ている。富山県立中央病院のUC治療におけるGMAの位置付けや期待される役割について、松田先生は『当科で診療しているUC患者は、治療の安全性を重視される方が多く、GMAは患者さんの同意を得やすい治療法であると私は考えています。当院では入院によるUCの寛解導入療法において、殆どの場合GMA治療を実施しています【図】。
治療戦略として、ステロイドとGMA週2回の集中治療を組み合わせて治療強化することで、早期の炎症抑制を図ります。そして、退院後の外来治療において、GMAを週1回行いつつ、ステロイドを漸減します。この際、患者の希望があれば、外来時にGMAを週2回に戻すこともありますが、基本的には、GMAの10~11回の完遂を目指しながら薬剤投与量の調節をしています。
なお、寛解導入時にMayo内視鏡スコア(MES) 1の場合は、たとえ自覚症状が改善されていても、再燃しやすい傾向があるため、服薬アドヒアランスの重要性について丁寧に説明して患者の理解を得る必要があります。
また、冬季のインフルエンザなど、呼吸器ウイルス感染症の流行時には、IBD患者が免疫抑制治療について不安を感じる場合も少なくないことから、感染症を考慮した治療法の選択が望まれます。
これからのUC診療においては、治療の長期化や高齢患者の増加など、安全性や発癌などへの注意がより一層求められています。このような状況に対応するため、各種薬剤の特徴を十分把握した上で、GMAなど非薬物療法を適切に組み合わせながら治療を進めて行くことが望まれているのではないでしょうか。』とまとめられた。
1) 松田 耕一郎 ほか:日本消化器病学会雑誌, 114(suppl-2), A493, 2017 (JDDW2017, 2017年10月)
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