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GMAのこれまでとこれから:GMAのクリニカルパール探求

Adacolumn Clinical Pearl

アダカラムインタビュー記事シリーズ

GMA 20年をこえる臨床知見からの提言

全国の先生方より、消化器および皮膚領域における最新の診療状況を踏まえた上で、様々な視点から顆粒球吸着療法(GMA)の日常診療における活用方法や工夫、メリットや課題についてお話いただきます。

IBD:炎症性腸疾患、UC:潰瘍性大腸炎、CD:クローン病、PP:膿疱性乾癬、PsA:乾癬性関節炎(関節症性乾癬)

※先生のご所属先および役職、治療指針等は掲載時点の情報です

熊本県アダカラム
インタビュー記事シリーズVol. 28

複雑化するUC治療における薬物療法の課題とGMAへの期待

熊本大学大学院生命科学研究部 消化器内科学 特任助教
古田 陽輝 先生

近年のUC治療では、分子標的薬など新薬の登場により選択肢が多様化し、特に難治例における治療成績の向上を導きました。その一方で、感染症のリスク、不耐症や薬剤性障害などの課題もあります。そこで今回は、UC治療における課題として薬剤不耐症への対応を中心に、非薬物療法としてのGMAの可能性について解説いただきました。

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熊本大学病院におけるUC診療の現況
 熊本大学病院では、年間約150例の潰瘍性大腸炎(UC)の診療を行っています。従来、UC患者の多くは若年発症という印象でしたが、近年は重症化あるいは難治化することが少なくない高齢発症の紹介が増加している状況です。また、最近は抗TNF-α抗体製剤をはじめとした、様々な生物学的製剤に治療抵抗を示す症例の紹介や相談も増加しつつあります。

 COVID-19の流行以降、UC治療におけるステロイド治療の重要性に変化は生じていませんが、安全性に対するより注意深い観察と早目の効果判定が求められるようになってきました。例えば、ステロイド投与時のインフォームドコンセントにおいて、感染症のリスクについて、より入念な説明を行っています。

 

UC治療における課題と対策
 近年、UC治療では分子標的薬の登場により選択肢が多様化し、ステロイド抵抗例や依存例といった難治例に対する治療成績が向上しました。ただし、治療のベースとなる5-アミノサリチル酸(5-ASA)製剤の位置づけは現在も変わっておらず、きわめて重要な薬剤です。一方、UC治療においては5-ASA製剤の不耐症が全国的に増加しているとの報告もあり1)、当院においても2014年からの5年間で16例の炎症性腸疾患(IBD)患者に不耐症を認め、これ以降も増加している印象があります。

 さらに、薬剤性肺障害を伴う5-ASA製剤の不耐症例も経験しています2,3)。UC患者において、大腸の炎症と、発熱などの臨床症状との間に乖離を認めた際は、胸部X線や必要時にはCTによる精査を行い、薬物性肺障害を疑う所見を認めることで、不耐の診断のきっかけになり得ます。一方、肺炎像からのみで薬剤性と感染性を完全に鑑別することは困難な場合もあります。そのような際には腸管炎症の制御のため、寛解導入療法として感染リスクの少ないGMAは選択肢の一つになると私は考えます。

 

熊本大学病院のUC治療におけるGMAの位置づけ
 COVID-19の流行やUC患者の高齢化に伴い、GMAの重要性はより増しているのではないでしょうか。もちろん、重症度に合わせて適切にステロイドを投与することは必要ですが、例えばステロイド投与量を増やす代わりにGMAという選択肢がある4)ことも、私は患者へ説明しています。

 また、ステロイドを十分量投与しても不応の場合、サイトメガロウイルス(CMV)腸炎の合併を鑑別する必要があります。そのような際には血中抗原検査のみならず、粘膜生検検体を免疫染色していただき、積極的に検索します。その結果、CMV陽性の場合は、抗ウイルス薬の投与に加え、寛解導入の選択肢としてGMAによる治療5)も考慮しています。

 近年、UC治療においても入院期間の短縮が強く望まれるようになり、併せて入院を必要とするのは、従来に比べ重症度の高い場合中心に変化しつつあります。従って、外来における治療強化を目的としたGMAの意義が高まっている印象を持っています。

 GMAの外来治療においては、UC患者の利便性向上のために、地域医療連携が重要なポイントとなります。当院でも、地域の透析クリニックおよび近隣のGMA可能な施設と連携を推進しており、最初は血管が確保され、GMAに対して良好なレスポンスが予想されるUC患者を紹介しています。今後、地域医療連携がより広がり、UC患者に対するGMAの知見やノウハウが透析施設において蓄積されることで、更なる治療成績の向上に期待しています。

 

1) Hiraoka, S. et al.:J Gastroenterol Hepatol. 2021;36(1):137-143.
2) 鶴田 結子, 古田 陽輝 ほか:日本消化器病学会九州支部例会プログラム・抄録集. 2020;(115):139. (第115回日本消化器病学会九州支部例会, 2020年6月)
3) 山岡 哲秀, 古田 陽輝 ほか:日本消化器病学会九州支部例会プログラム・抄録集. 2020;(116):136. (第116回日本消化器病学会九州支部例会, 2020年12月)
4) 下山 孝 ほか:日本アフェレシス学会雑誌. 1999;18(1):117-131.
5) Fukuchi, T. et al.:J Crohns Colitis. 2013;7(10):803-811.