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医療関係者の方へ

GMAのこれまでとこれから:GMAのクリニカルパール探求

Adacolumn Clinical Pearl

アダカラムインタビュー記事シリーズ

GMA 20年をこえる臨床知見からの提言

全国の先生方より、消化器および皮膚領域における最新の診療状況を踏まえた上で、様々な視点から顆粒球吸着療法(GMA)の日常診療における活用方法や工夫、メリットや課題についてお話いただきます。

IBD:炎症性腸疾患、UC:潰瘍性大腸炎、CD:クローン病、PP:膿疱性乾癬、PsA:乾癬性関節炎(関節症性乾癬)

※先生のご所属先および役職、治療指針等は掲載時点の情報です

栃木県アダカラム
インタビュー記事シリーズVol. 13

患者ニーズを考慮したUC治療戦略とGMAの可能性

獨協医科大学医学部 内科学(消化器)講座 准教授
富永 圭一 先生

近年ますますUC治療は多様化してきており、UC患者は仕事や学校生活にできるだけ支障を来たさない治療法を希望されます。そこで今回は、UC患者のニーズを考慮した治療戦略ならびにGMAの実際について伺いました。

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獨協医科大学病院におけるIBD診療の実際

 当院は栃木県南部に位置し、県内の中核医療を担っている特定機能病院です。消化器内科では内視鏡を診療の中心に据えており、炎症性腸疾患(IBD)についても診断や治療はもちろん、粘膜所見評価に対して内視鏡を駆使してさまざまな研究をおこなっています。

 IBD専門医による外来は週5回開設しており、患者数は潰瘍性大腸炎(UC)が約450名、クローン病(CD)が約200名です。大学病院の役割は専門的治療の提供であるとの考えのもと、当院ではできるだけ重症の方に継続して通院していただくこととし、軽症の方は近隣の医療機関に逆紹介するようにしています。

 

UC治療における薬物療法の効果と課題

 UCの薬物治療では5-アミノサリチル酸(5-ASA)製剤を基本治療薬としており、経口でも局所療法でも用量を最適化して使用しています。中等症から重症のUC患者にはガイドラインに則ってステロイドを使用しますが、COVID-19流行下においてはリスクを考慮すると高用量・長期投与しにくいため、現在はできるだけ使わないで済む方法を模索しています。ただし、ステロイド投与が必要なケースもあり、その際は十分量をきちんと使うようにしています。

 治療の目標ですが、UC患者が求めているのは臨床的寛解であり、一方、我々専門医が求めているのは内視鏡的寛解、すなわち粘膜治癒です。しかし私は、臨床的寛解でUC患者が満足しているのであれば、僅かに粘膜炎症が残っていたとしてもさらなる治療強化をする必要はないと考えています。5-ASA製剤や免疫調節薬で臨床的寛解が得られていれば、Mayo内視鏡サブスコアの1を0にすることを目的とした高度な免疫統御療法は行わない方針です。

 また新薬の場合は、予期せぬ副作用が発現することがあり、注意が必要です。当院の例ですが、分子標的薬の使用で臨床的寛解を維持したUC患者が、使用開始から44日後に胸痛があり、内視鏡検査をしたところ食道に潰瘍を認めた症例を経験しています1)。その他にも、免疫抑制薬の長期使用はリンパ増殖性疾患や感染症を念頭に置かなければいけませんし、抗TNF-α抗体製剤ではパラドキシカル反応が生じることもあります。

 

獨協医科大学病院におけるGMAの実際

 当院におけるUCに対するステロイドとGMAの比較検討では、寛解導入までの時間や寛解維持率は同等であり、有害事象の発現率はGMAの方が低いという結果でした2)。また、他施設で実施された患者アンケートにおいては、有効性に対して67.9%が、安全性に対して88.4%が満足との回答が得られています3)。しかし一方では、GMAを含む血球成分除去療法(CAP)施行に要する時間に関して、50%強が負担を感じていることも患者アンケートより明らかとなりました。外来でGMAを施行する場合は5~11回の通院が必要となりますが、当院では平日の日勤帯だけ、しかも治療スペースの関係で一度に2人までしか施行できません。IBD患者は治療のために仕事や学校を休む難しさを負担に感じる理由として挙げていました。

 こうした課題を解消するため、当院では病診連携のシステムを作りました。2016年より、宇都宮市中心部に位置する透析専門クリニック(宇都宮腎内科皮膚科クリニック)に依頼してGMAを施行してもらっています。体外循環治療のノウハウがあること、交通の便が良いこと、夕方や週末も施行可能なこと等の条件を満たした施設を探索し、院長が本校(獨医科大学)出身だったこともあって積極的に協力していただけました。GMAの実施は、先方のスタッフにおいても、透析以外の体外循環療法技術を習得する機会となっており、好影響があると伺っています。また、GMAは寛解導入に向けた治療であるため、施行するたびにIBD患者の状態が良くなることに達成感が得られているようです。しかしながら、現在はCOVID-19の伝播リスクを懸念し、治療連携が滞ってしまっているのが現状です。

 どのようなUC患者にGMAを施行するかですが、前述したようにCOVID-19流行下ではステロイドが使いにくいので、GMAを先行することもあり得ると思います【図】。もちろん、施行時に感染防止対策をしっかり行うことが前提です。もうひとつの適例は、寛解導入の際に生物学的製剤等で効果が不充分なとき、GMAを併用することです。他の治療法に併用しやすい点は、GMAの大きなメリットであると私は考えます。当院では、外来での寛解導入ではGMA単独、入院では薬物療法に併用するという使い方が多くなっています。新薬が多く出てきていますが、すべてのUC患者に効果があるわけではありません。非薬物療法であるGMAの役割として、他剤との併用による、治療効果の底上げに期待しています。

獨協医科大_富永先生_図表.jpg

1) Tominaga, K. et al.:Clin. J. Gastroenterol., 13(3), 340-343, 2020
2) Tominaga, K. et al.:BMC Gastroenterol., 13, 41, 2013
3) Nagase, K. et al.:Ther. Apher. Dial., 17(5), 490-497, 2013