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GMA20周年特設ページ:GMA治療の歩みと可能性

Adacolumn 20th Aniversary

アダカラムインタビュー記事シリーズ

GMA 20年の臨床知見からの提言

全国のIBD専門の先生方から、最新のIBDにおける治療環境を踏まえた上で、様々な角度からGMAの日常診療における活用方法や工夫、メリットや課題をお話しいただきます。

大阪府アダカラム
インタビュー記事シリーズVol. 11

UC診療の変遷とGMAに求められる現在の役割

医療法人錦秀会 インフュージョンクリニック
院長   伊藤  裕章   先生 (写真左)
看護師長 阪上 佳誉子 先生 (写真右)

免疫統御療法の選択肢多様化やGMAをはじめとする非薬物療法の発展により、UC治療は飛躍的な進歩を遂げました。そして、主に重症例を担当する中核病院と、重症化の回避を目指して、きめ細やかな対応を行うクリニックとが連携しながらUC診療を進める時代が到来しつつあります。そこで今回は、大都市中心部に位置するクリニックにおける、GMAを活用したUC治療の実際について伺いました。

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インフュージョンクリニックにおけるIBD診療の実際

――インフュージョンクリニックにおける炎症性腸疾患(IBD)診療の方針や特徴について教えてください。
伊藤先生:当院の基本方針は、IBD専門医による手厚い診療を提供することによって、入院や外科的介入の回避を図り、IBD患者の現在および将来的な日常生活をサポートすることにあります。クリニックにおける重症化を回避するための治療戦略と中核病院との連携は、IBD患者の急速な増加に対応する一つの手段と考えており1)、実際に2020年時点で当クリニックにおいては、年間で潰瘍性大腸炎(UC) 約600名、クローン病(CD) 約600名の外来診療を担っています。

 また、2020年はCOVID-19の流行が大きな診療上の課題となりましたが、当クリニックでは、その前から遠隔診療システム「CLINICS」と患者自身の病状を"見える化"するアプリ「IBDサプリ」を導入しており、また特に感染症に対して注意が必要な高齢のIBD患者はシンプルな電話診療でサポートしています。

――看護師の視点からインフュージョンクリニックの特徴について教えてください。
阪上先生:IBD治療は大きな進歩を遂げましたが、やはり現在でもIBDは難病であり、継続的な看護ケアが強く求められる疾患と考えます。当クリニックでは開設以来、入院病棟を有する施設と同様に、申し送り的なモーニングカンファレンスを毎日実施しており、情報を共有することで課題の解決を図っています。

 さらに、当クリニックではチーム医療を重視しており、看護師が積極的に診察へ同席することで、医師の治療方針を十分把握して、それを患者がどこまで理解されているかについて確認も行っています。例えばGMAの施行時にも、看護師が治療介助に付き、不安や疑問点がないか確認しています。

 

UC治療の変遷と外来通院治療の適応

――近年のUC治療の変遷とそれに伴う課題について解説いただけますか。
伊藤先生:2000年にGMAが保険適用となりましたが、その後、免疫調節薬や抗体製剤が相次いで上市され、2016~2018年には毎年新たな薬剤が使用可能になるなど、治療選択肢の多様化が進みました。これにより、UCの治療成績は大きく改善され、UC患者のQOL向上に寄与しました。

 ただし、各薬剤の位置付けについて、未だその根拠となるエビデンスは乏しく、治療指針においても優先順位が明確に記載されていないのが実情です。

 また、抗TNFα抗体製剤については、生涯に及ぶ寛解維持療法の必要性に関して、治療の安全性や医療経済的な視点から議論が生じています2)。このため、妊娠中の短期間の休薬(drug holiday)など投与中止に関する検証も進みつつあり、休薬が可能となる因子の抽出や休薬時の対策について、今後の知見の集積が待たれます。

――UC治療において課題となる様々な感染症に対する注意点について教えてください。
阪上先生:2020年は、COVID-19の流行が大きな社会問題となりましたが、元来IBD治療においては、感染症の合併に対する十分な注意が求められ、その兆候を捉えるための問診や観察がきわめて重要となります。特に発生頻度の高い呼吸器感染症に関しては、当クリニックのオリジナル問診票を作成し、1週間以内の咳嗽や喀痰の状態および息苦しさや寝汗の有無について確認しています。

 Bio投与患者における結核に対しては、投与前のスクリーニングはもとより、投与開始後も定期的に健診などにおけるX線検査の実施状況を確認し、一定期間以上未実施の場合には、当クリニックにおける検査を勧めています。

伊藤先生:結核に関しては、結核菌IFN-γ(T-SPOT)の陰性確認後の再活性化や新規発症が散見されるため、定期的なスクリーニングは重要と考えます。特に大阪府、中でも大阪市は、結核の罹患率が高い自治体ですので、やはり地域ごとの感染状況を鑑みた対策が望まれます。

 

現在のUC治療におけるGMAの役割とチーム医療の重要性

――インフュージョンクリニックにおけるGMAの適応について解説いただけますか。
伊藤先生:GMAに関しては、無床診療所においても導入可能な非薬物療法として、安全性を考慮する場合のUC治療における重要な選択肢の一つと捉えています【 上段】。高齢者や薬剤による副作用の既往患者をはじめとして、ステロイドを速やかに減量したい場合などに良い適応になると考えます。

 また、再燃の兆候を捉えた場合やBio効果減弱の際など、安全性を考慮しながら治療効果の底上げを図りたい場合もGMAは重要な選択肢の一つとなります。特に、再燃早期のGMAによる治療介入は重症化の回避に加え、生涯におけるステロイド投与量の減量にも寄与するものと期待しています。

――GMAの施行に関する留意点について教えてください。
阪上先生:当クリニックでは独自のアフェレーシスマニュアルを作成しており、それに基づいてGMA治療の標準化を行っています。本マニュアルは、当クリニックのWebサイトでも公開していますが、例えば、穿刺時の留意点や脱血がうまくいかない場合の対応、治療中の看護などについて、具体的な方法が記載されています【 下段】。

 そして、GMAの継続率上昇やひいては治療成績向上のためには、初回実施時のIBD患者に対する治療の流れや意義についての説明が重要となります。そのため、私たち看護師も疾患や治療に対する十分な理解とそれら情報の更新が求められていると考えます。

――GMAをはじめとしたIBD治療におけるチーム医療の意義について教えてください。
伊藤先生:チームとしてIBD診療に臨む上で、スタッフ全員がGMAをはじめとした各種治療について理解することで、治療前後の状態の変化や副作用の徴候を速やかに捉えることが可能となり、チームが有機的に結びついて機能します。

 また、GMAの施行やBioの点滴静注に要する時間を、患者の病勢の確認や、日常生活における疑問や不安のヒアリングなどに活用することにより、IBD患者自身の病態への理解が深まり、セルフケアおよびセルフコントロールに対する意識の向上も期待されます。

 その他の治療においても、当クリニックではチーム一丸となって取り組んでおり、2018年にはチオプリン製剤の看護介入によるアドヒアランスの変化に関する前向きの検討について、海外の学会にて発表しています3)

 このように、チーム医療をはじめとした私たちIBD専門クリニックにおける実践的な知見を、学会や雑誌に報告することは、クリニックにおける重症化や入院の回避に関するエビデンスの蓄積に繋がり、今後の更なる病診連携の推進にも寄与するのではないかと期待しています。

インフュージョンクリニック_図表.jpg

1) 高後 裕, 伊藤 裕章 ほか:日消誌, 108(4), 592-604, 2011
2) 伊藤裕章:日本臨牀, 76(増刊号3), 331-336, 2018
3) Okuda, M., Sakagami, K., Matsumoto, M., Ito, H., Shinzaki, S. et al.J. Crohns Colitis, 12(suppl 1), S576, 2018 (13th Congress of European Crohns and Colitis Organisation, Feb., 2018)