JIMROJIMRO

医療関係者の方へ

GMA20周年特設ページ:GMA治療の歩みと可能性

Adacolumn 20th Aniversary

アダカラムインタビュー記事シリーズ

GMA 20年の臨床知見からの提言

全国のIBD専門の先生方から、最新のIBDにおける治療環境を踏まえた上で、様々な角度からGMAの日常診療における活用方法や工夫、メリットや課題をお話しいただきます。

東京都アダカラム
インタビュー記事シリーズVol. 10

高齢者UCの課題とGMAの効果発現の特徴

順天堂大学医学部・大学院医学研究科
消化器内科学講座
准教授
澁谷 智義 先生

近年、増加を続ける高齢者UCにおいては、感染症に対する脆弱性をはじめとして、併存疾患の多さや、それに起因するポリファーマシーなど、UC治療を行う上で考慮すべき点が少なくありません。今回は、それら高齢者UCの課題とGMAの役割および効果発現の特徴について解説いただきました。

記事を見る

順天堂大学医学部附属順天堂医院におけるIBD診療の実際

 我々の施設では年間で潰瘍性大腸炎(UC) 800~1000例、クローン病(CD) 130~200例、腸管ベーチェット病 約40例を診療しており、生物学的製剤(Bio)や血球成分除去療法(CAP)、便移植療法など多様な治療や治験を実施しています。

 当院には透析室とは独立した血漿交換療法室(7床)があり、専属のスタッフが常駐し年間約1,900件の血漿交換が行われ、そのうち消化器内科の患者さんが200件強を占めており、外来で午前・午後ともにCAPが行える環境が整備されています。

 また、IBDの腸管外合併症は、関節炎、アフタ性口内炎、ぶどう膜炎、結節性紅斑、強直性脊椎炎、乾癬、壊疽性膿皮症、原発性硬化性胆管炎と全身に渡って発現し、治療に難渋するケースも珍しくありません。当院ではIBDに併発する腸管外合併症に対して、問診表などを用いて積極的にスクリーニングを行い、皮膚科・膠原病内科・消化器内科で協力して治療を行っています。我々は腸管外合併症を有するUCの自験例13例(壊疽性膿皮症7例・結節性紅斑6例)に対してCAPの有効性を検討しており、その結果、皮膚病変の改善に加えUCについても寛解5例・有効8例と全例でCAPの効果を認め1)、IBDに合併した皮膚病変に対してCAPが有効である可能性が示唆されました。さらに我々は、ベドリズマブ治療中に壊疽性膿皮症を合併したUC症例に対する顆粒球吸着療法(GMA)の有効性についても報告しています2)。皮膚病変はQOLへの影響が大きいだけに、今後、GMAの可能性に関して更なる知見の集積に期待しています。

 

高齢者IBDに対する治療上の留意点

 ステロイドの長期投与や免疫調節薬、生物学的製剤による治療中の高齢者IBDでは、日和見感染症などの重篤な感染症に注意が必要です。特にUC患者ではC. difficile感染症の発症リスクや入院死亡率が高く、さらなる注意が求められます。

 高齢者IBDでは、ステロイドによる骨粗鬆症関連骨折、うつ病などの精神状態の変化、糖尿病、高血圧症、緑内障の進行・悪化などが報告されており、ステロイドの使用量が制限される場合もあります。また、Bioも担癌患者や感染症の患者、心不全の患者には投与しにくい場合もあります。そのため、治療薬の制限や薬剤使用に伴う合併症の増加が懸念されます。

 また、併存疾患の治療薬に対しても注意が求められ、中でもワルファリンカリウムの使用には留意する必要があります。ワルファリンカリウムは、5-ASA製剤によって薬剤代謝が抑制されるため、抗凝固効果の増強に作用します。逆にステロイドやチオプリン製剤は、血液凝固促進作用を有するため、抗凝固効果の減弱に作用してしまいます。なお、チオプリン製剤はアロプリノールとの併用で、血中濃度が上昇し効果が増強するため注意が必要となります。5-ASA製剤やステロイド、チオプリン製剤は、IBD治療において基準治療薬であるだけに、これら薬物相互作用には、より一層の配慮が求められます。

 このように、高齢者IBDの薬物療法には、注意点が少なくありませんが、それでも用量に関して、不十分な量の投与は効果が期待できない一方で副作用を引き起こす可能性はあり、投与するのであれば、過剰投与を避けつつも必要十分量を投与します。従って、高齢者IBDの治療においては、その薬剤を投与するかどうかをまず考えます。Bioの中では作用機序から考えて、ベドリズマブが使いやすい印象を私は持っていますが、まだ十分なエビデンスがあるわけではありません。

 

高齢者UCに対するGMA治療の意義と特徴

 平成30年度の「潰瘍性大腸炎治療指針 supplement ─高齢者潰瘍性大腸炎編─」において、"高齢UC患者にCAPを施行した場合の副作用発現率は非高齢UC患者と差はなく、安全に施行できる。"と記載されているように、GMAは高齢者UCに対する重要な選択肢となります。

 そこで我々は、高齢者UCに対するCAPの有効性や効果発現の特徴について、レトロスペクティブに評価を行いました3)。その結果、Lichtigerの臨床活動指数(CAI)スコアは、高齢者UC群において、CAP治療が終了してからも、持続的に有意な低下を示しました【 上段】。そして高齢者UC群におけるCAP終了時とCAP終了1カ月後の治療成績は、有効率が54.5%から81.8%に、寛解率が36.4%から72.7%に上昇していました【 下段】。すなわち、高齢者UCでは非高齢者UCと比較してCAP終了時の寛解率はやや劣るものの、終了1カ月後の状況を見ると、非高齢者と同様の効果が得られました。GMAを含むCAP治療は、二次的に炎症局所への白血球の遊走を抑えるために効果発現まで時間を要し、高齢者ではより一層の時間を要すると私は推察しています。そのため高齢者UCでは、治療効果判定の時期を十分に見極める必要があります。追加治療が必要な場合は速やかな対応が求められますが、追加治療を待てる状況であれば不要な追加治療を避けることができる可能性があると考えています。

 近年、IBD治療は免疫抑制作用を有する分子標的治療薬の開発により目覚ましい発展を遂げました。一方で、患者の高齢化など免疫抑制をかけにくい特殊な状況や、他の薬剤に忍容性のない場面での治療を要する症例が増えているのも実情です。そのような症例への選択肢の一つとして、GMAは期待できると私は捉えています。ただし、今回の検討で示唆されたように、効果発現まで多少時間を要する一面もあるため、早めのGMA治療介入を考慮することが、特に高齢者UCに対しては望ましいのではないでしょうか。

順天堂_澁谷先生_図表.jpg

1) Nomura, O., Osada, T., Shibuya, T. et al.:J. Clin. Apher., 33(1), 21-28, 2018
2) Shibuya, T. et al.J. Clin. Apher., 35(5), 488-492, 2020
3) Shibuya, T. et al.Digestion, 101(1), 46-52, 2020