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GMAのこれまでとこれから:GMAのクリニカルパール探求

Adacolumn Clinical Pearl

アダカラムインタビュー記事シリーズ

GMA 20年をこえる臨床知見からの提言

全国の先生方より、消化器および皮膚領域における最新の診療状況を踏まえた上で、様々な視点から顆粒球吸着療法(GMA)の日常診療における活用方法や工夫、メリットや課題についてお話いただきます。

IBD:炎症性腸疾患、UC:潰瘍性大腸炎、CD:クローン病、PP:膿疱性乾癬、PsA:乾癬性関節炎(関節症性乾癬)

※先生のご所属先および役職、治療指針等は掲載時点の情報です

山形県アダカラム
インタビュー記事シリーズVol. 45

大学病院におけるUC診療の多様化とGMA維持療法の可能性

山形大学医学部 内科学第二講座
山形大学医学部附属病院 光学医療診療部 助教  八木 周 先生

大学病院では、臨床においてより高次な医療を提供しながら、併せて研究と教育に関しても、三位一体となって推進する必要があります。このような特性上、UC診療においても、他院からの紹介は重症例や難治例が中心となり、それら多岐にわたる病態や背景を有する患者個々に対して、非薬物療法を含めて幅広い選択肢を準備し、それぞれに最適な治療を行うことが求められます。そこで今回は、近年の治療選択肢が多様化したUC診療について、大学病院における実際を解説いただくと共に、2022年よりUC維持療法の新たな選択肢に加わったGMAの可能性についてお話を伺いました。

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山形大学医学部附属病院の消化器内科と光学医療診療部の特徴
 当大学は、消化器疾患全般に対するハイボリューム施設としての役割に加え、地域における重症例や難治例をはじめとして、特殊な経過を示す症例や合併症を有する症例など、複雑な病態を呈した患者さんの診療を担うことが求められています。光学医療診療部では、上部および下部の内視鏡診療はもとより、外科との連携により十二指腸腫瘍の腹腔鏡・内視鏡合同手術(D-LECS)の実施や内視鏡手術支援ロボットであるダ・ヴィンチを用いた術式における内視鏡のマーキングなどを行っており、炎症性腸疾患(IBD)診療においても外科との積極的な連携を推進しています。

 IBDの診療状況も他疾患と同様に、地域医療連携による紹介患者さんが中心であり、重症例や難治例の割合が高くなっています。潰瘍性大腸炎(UC)の場合は、ステロイド抵抗例やステロイド依存例といった難治例の紹介が多い印象があります。ただし近年は、大学病院や地域の中核病院勤務時代に生物学的製剤(Bio)の使用経験を有するクリニックの医師が増えていることから、Bio導入後に紹介されるケースも散見されます。

 

山形大学医学部附属病院におけるUC治療戦略
 私がIBD診療を開始した時、既に抗TNF-α抗体製剤は臨床の場に登場しており、その後も次々に多様な機序の分子標的薬が使用可能となりました。現在、分子標的薬の中で、どのような系統の薬剤を最初に用いるべきかといった検討および議論が盛んに行われていますが、分子標的薬全体としての位置付けは、ステロイドなど既存治療に対する反応性が乏しい場合の選択肢である点に変化はありません。

 特にUCにおいては、基本治療薬となる5-ASA製剤を十分量投与し、それでもコントロールが不十分な場合は、適切な量のステロイドを投与し、その反応性により依存例、抵抗例の見極めを行い、免疫調節薬の投与が検討されます。免疫調節薬の投与・継続が困難な場合や、ステロイド抵抗例もしくは効果不十分な場合に分子標的薬が必要とされます。外来ベースでの治療が可能なステロイド依存例に対しては、分子標的薬の選択肢が幅広くなります。近年は抗TNF-α抗体製剤以外の選択肢も増えてきたため、患者背景を重要視し、過度の免疫抑制を避けたい場合は、抗α4β7インテグリン抗体製剤や抗IL-12/23p40抗体製剤が選択されるケースもあります。

 いずれにしてもUC治療においては、病勢を十分コントロールすることが確実に求められます。Bioの中には効果発現に時間を要する薬剤も認められるため、その期間を非薬物療法であり他の治療への影響が少ない顆粒球吸着療法(GMA)で治療強化することも選択肢の一つと私は考えます。

 

山形大学医学部附属病院におけるGMの位置付け、活用法
 近年、高齢者IBDが増加していますが、高齢者は併存疾患が多く、その併存疾患にIBDの治療薬が加わると薬物相互作用やポリファーマシーが危惧されます。これらの懸念点も含めた総合的な安全性の観点から、高齢者のIBD治療において、非薬物療法であるGMAは治療選択肢の一つになると私は捉えています。実際に、GMAは保険適用から20年以上の臨床経験を有し、数多くのエビデンスを蓄積していますが【】、この中のPARTICULAR study1)において、高齢など特別な患者背景を有するIBD患者さんに対する有効性と安全性が報告されています。

 当院においても、抗TNF-α抗体製剤投与中のUC患者さんが妊娠されたため、妊娠後期よりGMAに切り替え出産を迎え、周産期をコントロールした経験があります。さらにGMAはPAdLI study2)において、抗TNF-α抗体製剤の効果減弱例に対する効果が検討されており、当院においても抗TNF-α抗体製剤への反応性に乏しいUC患者さんに対して、GMAの併用による治療強化を図る場合もあります。

 また、CAPTAIN study3)の結果を受け、2022年よりUCの寛解維持療法としてもGMAの使用が可能となりました。これによって、UCの寛解導入から維持療法まで、シームレスな治療が可能となった点の意義は大きいと考えます。個々のUC患者さんにおいて、各治療法に対する反応性はそれぞれ異なり、寛解導入においてGMAが奏効した場合、寛解維持療法でもGMAを施行することは合理的な選択になり得るものと推察されます。特に近年は、GMA施行に関して地域医療連携が進みつつあり、今後、寛解導入はIBD専門施設で行い、寛解維持は近隣の透析施設等でGMAを行えるような体制がより一層整備されることを期待しています。

 2000年代の初め、IBD治療は抗TNF-α抗体製剤の登場によって集約され、標準化に至るのではないかとの予想も散見されました。しかし現状は、むしろ選択肢が多様化し、さらに5-ASA不耐例の増加や複雑化する感染症のマネジメント、患者高齢化の進行、Monogenic IBDを含めた小児IBDの診断など、課題は増加している印象があります。このような状況下、私たちIBD専門医は、非薬物療法や既存治療を含めて、豊富な選択肢を準備しながら、個々のIBD患者さんの病態や生活に適した治療を一緒に考え、提案していくことが求められています。

山形大学_八木先生_図表.jpg

1) Motoya, S. et al.:BMC Gastroenterol. 2019;19(1):196.
2) Yokoyama, Y. et al:J Crohns Colitis. 2020;14(9):1264-1273.
3) Naganuma, M. et al.:J Gastroenterol. 2020;55(4):390-400.