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医療関係者の方へ

GMAのこれまでとこれから:GMAのクリニカルパール探求

Adacolumn Clinical Pearl

アダカラムインタビュー記事シリーズ

GMA 20年をこえる臨床知見からの提言

全国の先生方より、消化器および皮膚領域における最新の診療状況を踏まえた上で、様々な視点から顆粒球吸着療法(GMA)の日常診療における活用方法や工夫、メリットや課題についてお話いただきます。

IBD:炎症性腸疾患、UC:潰瘍性大腸炎、CD:クローン病、PP:膿疱性乾癬、PsA:乾癬性関節炎(関節症性乾癬)

※先生のご所属先および役職、治療指針等は掲載時点の情報です

東京都アダカラム
インタビュー記事シリーズVol. 49

UCの再燃防止に向けた実臨床における介入のポイント

順天堂大学医学部附属練馬病院 消化器内科 准教授 福生 有華 先生

UCの治療目標として、活動期の寛解導入はもとより、その後の健やかな日常生活を守るために、再燃をいかに防止していくかが重要となります。UCの再燃防止に向けては、寛解導入における粘膜治癒の達成や適切な寛解維持療法の選択、アドヒアランスや食事に関する患者さんへの説明と理解、再燃の兆候を捉えるための問診や検査などの確実な実施が望まれます。そこで今回は、UCの寛解維持期における治療介入のポイントついて解説いただき、併せて実臨床におけるGMAの位置付けや活用法についてお話を伺いました。

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順天堂大学医学部附属練馬病院におけるIBD診療の実際
 当院は、人口70万人を超える練馬区において、地域の医師会と綿密な連携を図り、急性期疾患に注力した基幹病院としての役割を担っています。消化器内科においては、隣県からの来院も多く、人口密集地における内視鏡診療をはじめとしたハイボリューム施設としてのタスクを果たしながら、小腸におけるHIV/EBV陰性の形質芽球性リンパ腫など希少症例の診療も担っており1)、幅広い対応力を心掛けて日常診療に臨んでいます。

 炎症性腸疾患(IBD)に対しては、専門の炎症性腸疾患外来を設置し、患者数の多い年齢層にあたる学生や社会人も通院しやすいよう土曜日も診療を行っています。最近では地域医療連携による紹介体制の構築も進み、2017年度から2021年度で潰瘍性大腸炎(UC)は約190例から約250例に、クローン病(CD)は約20例から約50例へと患者数は増加しました。近年の特徴として、高齢発症および若年~中年発症から移行された高齢IBD患者さんも増加しており、特に紹介患者さんでは、糖尿病や心血管病などの併存症や易感染性などを呈する方もおり、IBD治療が複雑化する要因の一つとなっています。

 

IBD治療における近年の傾向と課題、留意点
 COVID-19の流行を契機として、社会全体の感染症に対する意識が高まりました。IBD治療においては、全身性ステロイド投与とCOVID-19の重症化との関連が示唆されたことから、JAPAN IBD COVID-19 Taskforceよりステロイドの適切な使用について提言が出されています。安全性への考慮は必要ですが、ステロイドはIBDの寛解導入において重要な薬剤であるため、適切量による集中的な治療と漸減が重要と考えます。

 5-アミノサリチル酸(5-ASA)製剤に関しては、IBDの基本治療として十分量の投与とその継続が望まれます。特に寛解導入後や病歴が長い患者さんでは、アドヒアランスが低下する場合も散見されることから、再燃を防ぐためにも5-ASA製剤の重要性について十分な説明を行い、患者さんの理解を得る必要があります。5-ASA製剤の服薬を遵守いただくことで、例えば、寛解期において再燃の兆候を患者さんが自覚した際、5-ASA製剤の増量あるいは他の選択肢により治療強化を図るなど、再燃早期から治療介入を判断することが可能となり、予後の改善に繋がることが期待されます。

 再燃の兆候を含め、IBDの病勢把握のためには、患者さんの自覚症状や便中カルプロテクチン、LRGなどのバイオマーカーも有用です。当院では、自覚症状に関するオリジナルの問診票を用いて病勢を管理し、変化を認めた際には早期対応を図っています【】。

 UC治療において、5-ASA製剤およびステロイドといった既存治療ではコントロールが不十分な場合、重症度に応じて、非薬物療法である顆粒球吸着療法(GMA)による治療強化や生物学的製剤(Bio)、低分子化合物、カルシニューリン阻害剤が選択肢となります。UC治療指針において、Bioなどの投与順を含め位置付けは明確化されておらず、患者個々の病態や背景、希望などを鑑みて治療法を選択しているのが実情です。当院では、速やかな寛解導入を図りたい場合は抗TNFα抗体製剤を選択する割合が高いものの、ステロイド依存例など比較的状態が安定しているような場合は、ライフスタイルに沿った治療を患者さんと共に考えています。

 Bio等を用いていてもコントロールが不十分な場合、他剤への切り替えを必要としますが、切り替えを重ねるほど継続率や治療効果の低下が危惧されます。そこで当院においてUCの多剤薬剤スイッチ症例の臨床学的特徴について検討したところ、粘膜治癒に至らなかった症例では1年以内に増悪しやすく、薬剤の切り替えがその都度求められることが示されました2)。特に治療において粘膜治癒に至らない場合は、多剤薬剤スイッチ症例へと移行するリスクが上昇するため、入念に病勢を把握し、適切なタイミングで治療強化するなどの対応が必要であると捉えています。

 

IBD治療、特にUC治療における維持療法を含むGMAへの期待
 当院において、GMAを含む血球成分除去療法(CAP)を施行して寛解に至ったUC患者さんを対象に、CAP終了から1年の経過についてレトロスペクティブ解析を行っています3)。これまでGMAは寛解導入療法のみでの使用に限られており、本検討においても他の薬剤で寛解維持を行っていましたが、2022年1月よりUCの寛解維持療法として保険適用され、寛解導入時にGMAが有効であった患者さんはそのまま継続して使用が可能となりました。

 GMAによる維持療法のエビデンスとしては、CAPTAIN study4,5)において52週後の粘膜治癒率がCAP上乗せ群では対照群に比べ有意に高かったこと、最終評価時までに全例がステロイド離脱できたことが示されています。これまでの既存の薬物治療が無効、効果不十分または適応出来ない方などにとって朗報でありました。

 また、Bioを用いても粘膜治癒に至らなかった場合、安全性の観点よりBioの2剤併用が現実的ではないことから、治療強化のためにGMAの併用が選択肢の一つとして挙げられます。GMAは標的物質を阻害する分子標的薬とは異なる作用機序から効果の底上げを図り、さらに感染症など安全性の面からもBioとの併用に適した選択肢の一つであると私は考えます。抗TNFα抗体製剤とGMAの併用においては、中和抗体の産生抑制が報告されており6)、Bioの効果持続も期待されます。非薬物療法であるGMAは、合併症等を理由に薬物療法の適応が難しい場合や、効果不十分のために治療強化したい場合など、様々なシチュエーションにおいて重要な選択肢の一つとなるのではないでしょうか。

順天堂練馬病院_福生先生_図表.jpg

1) Fukuo, Y. et al.:Intern Med. 2021;60(18):2947-2952.
2) 福生 有華 ほか:日本消化器病学会雑誌. 2021;118(suppl-1):5412. (第 107回日本消化器病学会総会, 2021年4月)
3) 福生 有華 ほか:日本消化器病学会雑誌. 2017;114(suppl-1):264. (第 103回日本消化器病学会総会, 2017年4月)
4) 承認時評価資料:潰瘍性大腸炎の寛解維持に対する血球成分除去療法の有効性の検討
5) Naganuma, M. et al.:J Gastroenterol. 2020;55(4):390-400.
6) Yokoyama, Y. et al.:J Crohns Colitis. 2020;14(9):1264-1273.