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医療関係者の方へ

GMAのこれまでとこれから:GMAのクリニカルパール探求

Adacolumn Clinical Pearl

アダカラムインタビュー記事シリーズ

GMA 20年をこえる臨床知見からの提言

全国の先生方より、消化器および皮膚領域における最新の診療状況を踏まえた上で、様々な視点から顆粒球吸着療法(GMA)の日常診療における活用方法や工夫、メリットや課題についてお話いただきます。

IBD:炎症性腸疾患、UC:潰瘍性大腸炎、CD:クローン病、PP:膿疱性乾癬、PsA:乾癬性関節炎(関節症性乾癬)

※先生のご所属先および役職、治療指針等は掲載時点の情報です

岐阜県アダカラム
インタビュー記事シリーズVol. 4

UC治療における粘膜治癒の意義と内視鏡診療の重要性

岐阜大学医学部附属病院
光学医療診療部
臨床教授 荒木 寛司 先生
(現 松波総合病院 副院長/光学診療センター長/炎症性腸疾患センター長)

IBDに対する光学診療は進歩を続けており、負担の少ない内視鏡検査が広がりつつあります。さらに粘膜治癒を目指す治療が一般化していることから、今回は臨床における適切な内視鏡検査のタイミングとGMAの役割についてお話を伺いました。

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岐阜大学医学部附属病院におけるIBD診療の実際

 岐阜大学医学部附属病院は、炎症性腸疾患(IBD)を含む消化管疾患に対する光学診療に関して、様々な手法を先駆的に推進し、知見を提示している。例えば上部消化管では、機能検査であるハイレゾリューション食道内圧検査の導入や食道静脈瘤の全例に対する食道静脈結紮術(EVL)の施行1)、食道癌の粘膜下層浸潤例に対する光線力学療法(PDT)などを行っている。

 内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)に関しても、潰瘍性大腸炎(UC)に合併した線維化が強い腺腫性ポリープに対する積極的な適応など、上部・下部併せて年間400例以上に実施しており、東海三県におけるESDの中心的な役割を果たしている。

 一方、IBDにおける光学診療について、荒木先生は『頻回の内視鏡検査は、患者負担の増加に加え、病態への影響も危惧されます。このため、CTコロノグラフィや便中カルプロテクチン等を用いて病勢を把握しながら、適切なタイミングによる内視鏡検査の実施に努めています。

 特に便中カルプロテクチンは、客観的な数値による評価が可能であり、インフォームドコンセントにおいて活用しやすい検査と捉えています。当初は、便が検体であるため、患者さんの心理的な障壁を懸念しましたが、炎症の状態を推測できることを説明すると、比較的円滑に受容される印象があります。』と述べられた。


UC治療における粘膜治癒の意義

 UC治療においては、粘膜治癒の達成により再燃率や手術率、発癌率の低下が期待できる。岐阜大学医学部附属病院における粘膜治癒の定義について、荒木先生は『粘膜治癒の判定において、内視鏡的活動性評価スコアとしてMES (Mayo Endoscopic Subscore)が広く用いられています。従来、MESにおける粘膜治癒の定義は、MES 0もしくはMES 1でしたが、近年は再燃率の観点からMES 0の方が望ましいとされています。

 それではMES 1の場合に、どの程度の追加治療を行うかについてですが、当院では、その時点の治療が5-アミノサリチル酸(5-ASA)製剤のみであった場合は、増量を行うことが一般的です。しかし、新たな薬物療法の追加に関しては、安全性の面から消極的なのが実情であり、この点については議論が多いだけに、今後の知見の集積に期待しています。』と述べられた。


UC治療の粘膜治癒達成に向けたGMAの可能性

 UC治療では、薬物療法はもとより、非薬物療法である顆粒球吸着療法(GMA)や栄養管理などを加えた集学的治療が重要となる。中でもGMAは、感染症リスクに影響を与えにくい点などが期待されている。このGMAを含む粘膜治癒を目指した治療について、荒木先生は『生物学的製剤(Bio)は一旦投与すると、寛解維持を含め投与期間が長期に及びます。従って、ステロイド依存性あるいは抵抗性の難治例に対する治療において、Bioを早期から適応させるのではなく、あくまで免疫調節剤を十分試みた後に検討すべきと考えます。

 すなわち、まずはNUDT15 遺伝子多型を調べた上で、アザチオプリン(AZA)もしくは6-メルカプトプリン(6-MP)を用います。それでも難渋する場合にタクロリムス(TAC)やBioを検討する方針です。

 具体的な寛解導入の例として、ステロイド依存性あるいは抵抗性のUC入院患者に対しては粘膜治癒を期待して、TACとintensive GMAを併用するケースが多くなっています【】。この治療で寛解に至ると、多くの場合、寛解維持療法を5-ASAのみか、もしくはAZAや6-MPにて行うことも可能となるため、臨床上の意義は大きいと考えます。

 一方、腎機能が低下した高齢者など、特殊な背景によりTACが投与しにくい場合は、ベドリズマブが比較的使用しやすく、ベドリズマブ投与とほぼ同時期からintensive GMAの併用を選択するケースが多くなっています。』と、治療方針の例を提示された。


今後のGMA治療に対する展望

 最後に、今後のGMA治療の位置付けや展望について、荒木先生は『GMAの特徴としては、GMAを3回実施した後に反応性の評価が可能な点があげられます。すなわち、intensive GMAの場合は初回のGMA実施から約1週後に治療の継続か中止の判断を行うことができ、無効の場合にも次の選択肢へ速やかに移行できます。このため、GMAはより早期に治療を実施しやすいと考えています。

 また、GMAはステロイドナイーブ例に対して、非薬物療法である点から受容されやすく、Bioの一次無効や二次無効に対しても、重要な選択肢となります。

 UC治療においては、新薬が続々と開発されていますが、それでも単剤での治療成績には限界があり、様々な治療を組み合わせる必要があります。GMAは20年の臨床経験から効果と安全性の評価が確立しており、薬物療法とは異なる作用機序から治療の底上げが期待できます。私たちIBD専門医は、今後も引き続きGMAを重要な選択肢として、適切なUC患者に適切なタイミングで実施していくことが求められるのではないでしょうか。』と総括された。

岐阜大_図表案.jpg

1) 荒木 寛司:ENDOSC. FORUM digest. Dis., 32(2), 93-128, 2016