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GMAのこれまでとこれから:GMAのクリニカルパール探求

Adacolumn Clinical Pearl

アダカラムインタビュー記事シリーズ

GMA 20年をこえる臨床知見からの提言

全国の先生方より、消化器および皮膚領域における最新の診療状況を踏まえた上で、様々な視点から顆粒球吸着療法(GMA)の日常診療における活用方法や工夫、メリットや課題についてお話いただきます。

IBD:炎症性腸疾患、UC:潰瘍性大腸炎、CD:クローン病、PP:膿疱性乾癬、PsA:乾癬性関節炎(関節症性乾癬)

※先生のご所属先および役職、治療指針等は掲載時点の情報です

兵庫県大阪府アダカラム
インタビュー記事シリーズVol. 44

潰瘍性大腸炎におけるGMAの新たな役割

関西医科大学附属病院 消化器肝臓内科          長沼   誠  先生 (写真中央)
兵庫医科大学 消化器内科学講座 IBDセンター   渡辺 憲治 先生 (写真右)
兵庫医科大学 消化器内科学講座 IBDセンター   横山 陽子 先生 (写真左)

2022年1月よりアダカラムを用いたGMAが潰瘍性大腸炎の寛解維持療法として保険適用となりました。今回は医師主導試験として行われた寛解維持療法のエビデンスであるCAPTAIN Studyのプロトコール検討委員である3人の先生方に、試験の経緯・結果を振り返りながら、GMAの今後の可能性についてお話しを伺いました。

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CAPTAIN Studyが行われた背景とUC寛解維持療法におけるアンメットメディカルニーズ
渡辺先生:まず、CAPTAIN Study1)の実施経緯について振り返っていきたいと思います。本試験が開始された2010年代前半は、潰瘍性大腸炎(UC)の新たな治療選択肢として抗TNF-α抗体製剤が登場し、治療成績の向上に繋がったものの、治療の選択肢、特に寛解維持療法は少なく苦労していました。

横山先生:顆粒球吸着療法(GMA)を含む血球成分除去療法(CAP)によるUC寛解維持療法についての研究は、当時の私の上司であった福永健先生のアイディアでした。GMAは、薬剤不耐例あるいは高齢者などの安全性への考慮が必要な患者さんに施行することが多く、このような薬剤を使用しにくい症例に対して、寛解導入だけでなく、寛解維持療法の選択肢としても望まれていたことが、本研究が始まった一つの理由でした。また、福永先生の中にはGMAで臨床的に寛解導入になっても、治療終了数か月後に再燃し、再度GMAを導入すると寛解に至る症例を経験したことより、寛解を維持する治療選択肢として、GMAの有効性を検討したいと考えたのではないでしょうか。

 兵庫医大におけるGMAのUC寛解維持療法の検討では、症例数は30例と少なかったものの、寛解導入後に維持療法としてGMAを継続する群、薬物療法を行う群、シャムカラムを用いて体外循環を行う群の3群に分けて、1年間フォローアップしたところ、維持療法を開始する前のステロイド量が20mg/日未満であった症例において、GMAを1年間継続した群がシャムカラム群よりも寛解維持率が有意に高いことが示されました2)

長沼先生:2010年代前半においても、UC寛解維持療法としてチオプリン製剤を選択することはできましたが、各医療機関で十分にチオプリン製剤の使用が浸透しているとは言えず、安全性の面でリンパ腫のリスクが懸念されていました。NUDT15遺伝子多型検査もありませんでしたので、一定の確率で副作用が発生していました。

 このような状況下で、慶應義塾大学の桜庭篤先生が、GMAで寛解導入した症例はGMAで維持すれば良いのではないか、との発想をもとに、臨床研究に取り組まれていました。最終的にUC 21例の検討により、24カ月後の寛解維持率はGMA群とチオプリン製剤群において有意な差はなかった、つまり寛解維持効果は同等である可能性が示唆されました3)

渡辺先生:私の患者さんの中には、再燃のたびにGMAを繰り返し施行している方がいました。GMAの効果を実感された患者さんからは、再燃時に自らGMAで治療して欲しいと希望されたこともあります。せっかく状態が良くなっているなら、悪くなってから再度頻回に通院するよりも、寛解導入後に一定頻度でGMAを継続することはできないかと考え、GMAで寛解導入に至った患者さんを対象に、月1回のGMA寛解維持療法を施行し、チオプリン製剤による寛解維持療法と比較検討して有効性を示しました。この検討結果は平成21年度の難治性炎症性腸管障害に関する調査研究第2回総会にて報告しています4)

 治療選択肢が少なかった頃のメディカルニーズに加え、UC寛解維持療法としてのGMAに関する検討結果2-4)が、医師主導によるCAPTAIN Studyの実施へとつながったわけですが、試験が開始された2013年当時と比べ、治療選択肢が増えた現在においても、UC寛解維持療法における課題はありますか?

横山先生:様々な生物学的製剤(Bio)が承認されましたが、Bioを導入するまで疾患活動性が高くないが寛解維持が難しい症例や、高齢患者さんが増えたことで担癌患者さんや癌の既往歴のある患者さんも診療する機会が増えており、そのような症例に対する維持治療は課題の一つと思います。

長沼先生:近年使用されているBioの寛解維持については効果を感じていますが、やはり一定の確率で再燃する薬剤もあります。その場合の再導入をどうするかは課題の一つです。

渡辺先生:最近では5-アミノサリチル酸(5-ASA)製剤不耐例も挙げられます。UC寛解維持期の治療選択肢が増えた現代においても、アンメットメディカルニーズは数多く存在しているのではないでしょうか。

 

CAPTAIN Studyから見えてきた寛解維持療法としてのGMAの有効性と安全性
渡辺先生:CAPTAIN Studyにおいて、主要評価項目(52週間の累積寛解維持率)は対照群と有意差がありませんでしたが、一方で、累積寛解維持率の生存曲線を見ると、半年くらいからCAP上乗せ群と対照群の生存曲線の間で差が開いてきています【1】。これはCAPの寛解維持療法としての効果を示しているのではないかと、私は考えています。また、寛解維持療法で長期間にわたりCAPを継続しても重篤な副作用は報告されませんでした。

横山先生:副次評価項目である52週後の寛解維持率では有意差がなかったものの、対照群と比較してCAP上乗せ群が高い傾向にあり、52週後の粘膜治癒率は、CAP上乗せ群で有意に高い結果となりました。長期予後を考えた場合、粘膜治癒は重要な治療目標となり、この結果は意義深いと考えています。

 

GMAによる寛解維持療法が対象となる患者像とは
渡辺先生:では次に、どのような患者さんがGMAによる寛解維持療法の対象になるかという点について議論していきたいと思います。まず私は、過去にGMAを受けて効果を実感されている方は、実感があるからこそ月2回の通院にも抵抗が少なく、対象になるのではないかと考えています。

横山先生:高齢の患者さんや、薬剤に対して不安をお持ちの患者さんはGMAの寛解維持治療の候補になるかと思います。また、これまでGMAによる寛解導入療法が有効であったが治療終了後しばらくすると再燃してしまう症例やパーシャルレスポンダーの方にも、寛解導入治療後、継続して維持療法を行うという選択肢もあると考えています。

長沼先生:チオプリン製剤が適応できない症例に対しても、GMAが選択肢の一つとなりえるのではないかと考えています。また、私はGMAによる寛解導入療法時のパーシャルレスポンダーよりも、完全に寛解導入できた症例が適していると思います。

渡辺先生:GMAによる寛解維持療法の最適化を図るという意味では、寛解導入時に有効であった患者さんのほうがその後の有効性も期待できるかもしれません。また、"Mayo内視鏡スコア2"、"生物学的製剤ナイーブ"、"ステロイドナイーブ"、"年齢60歳以下"、"罹病期間1年未満"がGMAによる寛解導入療法の有効性予測因子であったという報告5)もありますので、罹病期間が短い患者さんなど、このような背景因子を有する患者さんの方が良好なコントロールが得られる可能性があると考えております。

 また、寛解維持療法としてチオプリン製剤は非常に有用な薬剤ですが、エプスタインバーウイルス(EBV)未感染者においてチオプリン製剤を併用した場合にリンパ増殖性疾患(LPD)のリスクが増加するという報告6)があり、近年、EBV未感染の若いUC患者さんの増加が注目されています。日本国内においてEBV感染状況の実態を調査したEBISU study7)によると、チオプリン製剤を使用している炎症性腸疾患患者さんの約30%、小児患者さんの半数近くがEBV未感染という結果が出ており、LPDリスクの増加が懸念されます。このようなリスクを考慮した場合、GMAを選択肢として検討するのはいかがでしょうか?

長沼先生:確かにEBISU Studyの結果もありますし、リンパ腫のリスクを考えると、高齢者だけでなく若い人もGMAの候補になるかと思います。ただし、チオプリン製剤の投与を回避するという観点からはGMAは選択肢の一つとなり得ますが、GMAの治療の間隔を伸ばすとか、土日に治療ができるようになるとか、利便性の面ではもう少し工夫が必要だと感じています。

渡辺先生:患者さんが日曜日や週末、または平日の夜にGMA治療を希望される場合は、透析施設、クリニックとの連携が必要になるかもしれませんね。

 また、治療頻度の話ですが、月2回が保険適用になっているので、寛解導入後はまず月2回でGMAをおこない、その後、ステロイド離脱やカルプロテクチンの正常値、あるいは内視鏡的寛解となったことなどを確認してから徐々に治療の間隔を調整していく、といった治療スケジュール【2】はいかがでしょうか?

横山先生:渡辺先生のおっしゃるとおりで、寛解導入では週2回の頻度で施行している症例が多いですが、その後、寛解に至ってもステロイドを完全に離脱できていない患者さんもいるので、ステロイドフリー寛解になるまでは月2回で施行するのが良いのではないかと考えています。

長沼先生:患者さんも体調がよくなってくると、ご自身の判断で自然と病院への足が遠のいていくのが現状です。2カ月位は月2回でGMA治療を行い、内視鏡やそのほかの活動指標が安定していたら、1カ月に1回にするのが良いと思います。

 

GMA寛解維持療法の出口戦略とは
渡辺先生:では次に、GMAによる維持療法をいつまで続けるか、出口戦略について話していきたいと思います。保険適用上は48週間を一つの区切りとし、医学上の必要性があればその後も継続可能ですが、完全粘膜治癒を達成したら止めるのか、あるいは患者さんの希望で止めてもよいのか、治療を終了するタイミングはどのようにお考えでしょうか。

長沼先生:私は患者さんのニーズに合わせて思い切って止めてみるのもよいと思います。あまり粘膜治癒にこだわりすぎずに、むしろQOLを考えて止めてみることも一つの案です。一つの指標ではなく、バイオマーカー、患者さんの生活面、治療反応性などを総合的に判断することが重要と考えます。

渡辺先生:GMAで維持療法を行った患者さんに対して、再燃時にGMAを再導入した場合の有効性に関するデータが蓄積されれば治療期限を設定しやすいですし、今後取り組むべき課題かもしれません。

 

GMA寛解維持療法への期待と今後の課題
渡辺先生:最後にGMAの寛解維持療法について総括したいと思います。GMAによる寛解維持療法の位置づけについてご意見いただけますでしょうか。

長沼先生:私は寛解導入療法と寛解維持療法に分けるのではなく、一連の治療として考えます。例えば、入院をしてステロイドの効きがあと一歩足りないない患者さんであればGMA併用という選択肢を考えます。GMAを併用しながらステロイドの減量を行い、最終的にGMAで寛解維持療法を行いながらステロイドフリー寛解を目指せればよいかと思います。寛解維持時はバイオマーカーや患者さんからの要望を考慮して、中断できるようであればGMAを止めることを検討します。そして、再燃したら再度GMAで寛解導入を試みたいと考えています。

渡辺先生:寛解導入から寛解維持まで一貫してGMAを活用していく、ということですね【3】。

長沼先生:そうですね。寛解維持が保険適用になっていない他の薬剤との組み合わせも考えられますね。例えばタクロリムスとかシクロスポリン効果不十分症例にGMAで寛解導入して、そのままGMAで維持する方法も考えられますね。

渡辺先生:では、今後検討すべき課題は何でしょうか。

横山先生:やはり、出口戦略をどうするかという点ではないでしょうか。GMAをいつまで続けるのが良いのか、再燃した患者さんにGMAを再導入した場合の有効性についても検討すべき課題だと考えます。

渡辺先生:長沼先生、横山先生、ありがとうございました。GMAによる維持療法の承認に至る経緯の振り返りから、今後の課題まで、様々なことをディスカッションさせていただきました。日本発祥の治療法であるGMAですので、今後も日本で様々なデータを蓄積していく必要があります。これからも適切な治療を心掛けながら、新たな知見を集積してまいりたいと思います。

CAPTAIN座談会_図表.jpg

1) Naganuma, M. et al.:J Gastroenterol. 2020;55(4):390-400.
2) Fukunaga, K. et al.:Gut liver. 2012;6(4):427-433.
3) Sakuraba, A. et al.:Ther Apher Dial. 2012;16(3):213-218.
4) 渡辺 憲治 ほか:平成21年度厚生労働科学研究 難治性疾患克服研究事業「難治性炎症性腸管障害に関する調査研究」第2回総会プログラム. 2010.
5) Yamamoto, T. et al.:Clin Transl Gastroenterol. 2018;9(7):170.
6) Gordon, J. et al.:J Pediatr Gastroenterol Nutr. 2016;62(5):711-714.
7) Miura, M. et al.:J Gastroenterol. 2021;56(12):1080-1091.