埼玉県アダカラム
インタビュー記事シリーズVol. 7
IBDの外来通院治療によるQOL向上とGMAが果たすべき役割
大森敏秀胃腸科クリニック
院長
大森 敏秀 先生
近年、限られた医療資源の効率的な運用に向けて、地域医療連携の推進が図られており、IBD診療においてもクリニックに対する期待がより一層高まっています。今回は、IBDの外来通院治療を成功させるポイントとGMAが果たすべき役割についてお話を伺いました。
医療関係者の方へ
アダカラムインタビュー記事シリーズ
全国の先生方より、消化器および皮膚領域における最新の診療状況を踏まえた上で、様々な視点から顆粒球吸着療法(GMA)の日常診療における活用方法や工夫、メリットや課題についてお話いただきます。
IBD:炎症性腸疾患、UC:潰瘍性大腸炎、CD:クローン病、PP:膿疱性乾癬、PsA:乾癬性関節炎(関節症性乾癬)
※先生のご所属先および役職、治療指針等は掲載時点の情報です
大森敏秀胃腸科クリニック
院長
大森 敏秀 先生
近年、限られた医療資源の効率的な運用に向けて、地域医療連携の推進が図られており、IBD診療においてもクリニックに対する期待がより一層高まっています。今回は、IBDの外来通院治療を成功させるポイントとGMAが果たすべき役割についてお話を伺いました。
大森敏秀胃腸科クリニックは、IBD専門の紹介型胃腸科クリニックで、大腸内視鏡検査が充実しているのが特徴である。人口あたり医師数が少ない埼玉県において、2020年現在、潰瘍性大腸炎(UC)約340例の外来通院治療を行うなど、県中部エリアのIBD診療の一翼を担っている。
クリニックの特徴として、"すぐに診る"、"すぐに適切な治療"を基本方針に、個々のIBD患者の疾患活動性を手厚くコントロールしている。この点について、大森先生は以下のように述べられた。
『まずIBD診療において、きわめて重要な下部内視鏡検査では、《1. 少ない炭酸ガス送気量》《2. 基本を重視しつつ時間短縮》《3. 腸管洗浄剤を確実に服用させる事》を心掛けています。これらを遵守して、特に初回検査時は、苦痛の軽減を図るために細心の注意を払う必要があります。初回の内視鏡検査においてUCと診断された場合、Mayo内視鏡スコア(MES) 3であれば、速やかに大学病院と連携して治療に臨みます。MES 2以下では、顆粒球吸着療法(GMA)などを活用した外来通院による治療戦略を勧めています【図 上段】。また、中等症以上の場合は、同日中に医療費助成制度の申請サポートも行います。
入院での治療は、学業・就職・就労・出産・育児などのライフイベントに大きな影響を与える場合が少なくないことから1)、入院を回避するため、速やかに適切な治療を開始し、外来通院で病勢をコントロールすることが重要であると捉えています。』
大森敏秀胃腸科クリニックにおけるUCの外来通院治療では、ステロイドや生物学的製剤(Bio)の導入率が低い点が特徴であり、2017年の使用率は、ステロイド 1.3%(4/313例、全例静注)、Bio 2.8%(9/313例)に留まっている。この点について、大森先生は『ステロイドはIBD治療においてきわめて重要な薬剤であり、特に経口ステロイドは自覚症状改善にも有効なのですが、ステロイド依存性および抵抗性が一定の割合で生じてしまうため、難治化回避の観点からは可能な限り避けたい選択肢となります。
またBioは、一旦投与を開始すると寛解維持療法においても投与が必要となるため、長期に及ぶUC治療において、効果減弱(LOR)や安全性、医療経済などの面から、将来的な選択肢として温存する方が望ましいものと考えます。
当院におけるUCの初回治療では、5-ASA製剤を十分量投与しながら、GMAの連日実施を基本的な治療戦略としています【図】。そして、5-ASA製剤のみで寛解維持療法を行いますが、再燃した場合には、5-ASA製剤を増量し、NUDT15遺伝子検査を実施した上でチオプリン製剤の投与とGMAを開始します。その後の寛解維持療法では、粘膜に炎症が残存している場合にチオプリン製剤を継続します。』と述べられた。
続けて大森先生は『GMAは、1時間強の治療中、出来れば治療を一時中断することなく完遂したいのですが、活動期ではトイレの問題も無視できません。そこで、当院では初回内視鏡検査後の大腸が空の状態時に、続けて初回GMAを実施することで、トイレによる治療の一時中断の回避を図っています。そして、患者さんには適切かつ控えめの食事、ならびに5-ASA製剤の確実な服用を心掛けてもらうことで、翌日のGMAも完遂しやすくなります。初回・2回目のGMAを、トイレによる循環治療の中断なく実施できれば、3回目以降も円滑に治療できる印象があります。
また、GMA治療中は患者さんへ、病態の説明や日常生活および食事の注意点について指導を行う良い機会と捉えています。このようにして疾患の理解や、さらには医療スタッフとのコミュニケーションを図ることで、より安心して治療に臨んで頂けるものと考えます。』と解説された。
UC外来通院治療におけるGMA週5回法は、週2回法と比べ、約70%の寛解導入率に差は無いものの、短い治療期間で日常生活に戻れることが大森敏秀胃腸科クリニックより報告されている2)。そして、GMA週5回法を実施した1年後のMES 0およびMES 1の割合は、合わせて61.9%であり、粘膜治癒効果が持続する可能性が示唆されている3)。
このGMA週5回法と今後のUC治療の展望について、大森先生は『患者さんは、日常生活への速やかな復帰を希望される場合が多く、GMA週5回法は比較的受容されやすい治療オプションと私は考えます。
また、COVID-19の流行以来、IBD患者さんも心配されているように、長期に及ぶステロイドなどの免疫抑制治療を行い難いのが実情です。このため、ステロイド導入前に、5-ASA製剤とGMA集中治療の併用により早期に粘膜治癒を達成することを期待しています。今後、UC治療においては炎症をコントロールしながら、感染症にかからないための治療戦略が重要ではないでしょうか。』とまとめられた。
1) 大森 敏秀:日本小児栄養消化器肝臓学会雑誌, 28(1), 37, 2014 (第30回日本小児肝臓研究会, 2013年7月)
2) 大森 敏秀:日本消化器病学会雑誌, 112(suppl-1), A409, 2015 (第101回日本消化器病学会総会, 2015年4月)
3) Ohmori, T. et al.:12th Congress of European Crohn's and Colitis Organisation, Feb., 2017
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