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GMA20周年特設ページ:GMA治療の歩みと可能性

Adacolumn 20th Aniversary

アダカラムインタビュー記事シリーズ

GMA 20年の臨床知見からの提言

全国のIBD専門の先生方から、最新のIBDにおける治療環境を踏まえた上で、様々な角度からGMAの日常診療における活用方法や工夫、メリットや課題をお話しいただきます。

東京都アダカラム
インタビュー記事シリーズVol. 25

長期予後を考慮したIBD治療と非薬物療法としてのGMAの意義

帝京大学医学部 下部消化管外科 IBDセンター 准教授
松田 圭二 先生

IBD診療においては、患者の高齢化や治療の長期化を背景に、癌化に対するサーベイランスと早期介入の必要性が高まっています。また、IBD患者の予後改善に向けては内科的治療だけでなく、適切なタイミングによる外科的治療の実施が求められており、これらの点から、消化器内科と消化器外科との連携がより重要となります。そこで今回は、消化器内科と消化器外科の機能を併せ持つIBDセンターにおける治療の実際と、非薬物療法としてのGMAの意義について解説いただきました。

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帝京大学医学部附属病院 IBDセンターにおける診療の実際

 帝京大学医学部附属病院では、年間約540例〔潰瘍性大腸炎(UC) 380例 / クローン病(CD) 160例〕の炎症性腸疾患(IBD)診療を行っています。当院における患者数は年々増加しており、その背景には、2017年にIBDセンターを設立し、消化器内科と消化器外科が積極的に連携可能となったことが寄与しているものと推察しています。実際に、手術を要した患者のうち、他院からの紹介患者の割合は、IBDセンター設立の前後で全体の約3割から約8割へ増加しました。

 手術の内訳として特に、内科的治療では病勢のコントロールが難しい患者や緊急手術が必要な患者が増えており、腹会陰式直腸切断術を要するCD1)、前立腺癌治療中に発症した重症UC2)、大腸癌を合併した若年UC3)などの治療経験を報告しています。

 また当センターでは、顆粒球吸着療法(GMA)をはじめとする非薬物療法から分子標的薬まで、多様な治療法の選択が可能であり、内科医のみならず外科医も積極的に薬物療法を行っています。私たちは「外科医は手術だけ行っていれば良い」という考えではありません。外科医も薬物療法を学び、薬物療法が手術に与える影響などに精通しておく必要があると考えます。大腸癌の化学療法を多くの病院で外科医が行っているように、IBDの薬物療法に外科医が関わっていくことは、IBD患者の予後改善に向けて重要と捉えています。

 

IBDの長期予後を考慮した治療のあり方

 重症UC患者に対する手術介入の時期を世界的にみると、日本は遅い傾向にあります4)。欧米ではステロイド投与開始後3日以内に効果判定を行い、効果を認めない場合は手術が選択されるか、あるいは二次治療として抗TNFα抗体製剤などの分子標的薬を投与します。この二次治療も不応の場合は、数日で緊急手術となります。このような欧米の状況に比べ、日本ではステロイド投与後7~14日以内に効果を判断するとガイドラインに記載されており、欧米における3日以内の効果判定とは差があるのが現状です。

 もちろん日本の内科医が、きめ細やかに重症UC患者の診療にあたっているのだと思いますが、例えば米国結腸直腸外科学会(ASCRS)のガイドラインでは、手術までの期間が長いほど、体力の低下や栄養状態の悪化をもたらすと注意を喚起しています5)。手術適応の判断は、IBDに精通していない医師では容易なことではありません。このため手術適応に悩んだ際は、IBDセンターなどへの相談や連携が望まれます。

 一方、IBD診療においては、患者の高齢化や治療の長期化に伴い、癌化サーベイランスがより重要となっています。まずUCでは、発症後8年の全大腸炎型と左側大腸炎型がサーベイランスの対象となります6)。ただし、UC発症2年後に上行結腸癌を認めた30代の若い患者さんも経験しており3)、UCの場合は検査を躊躇すべきではないと考えます。CDではUCに比べると癌の早期発見は困難なのが実情であり、現在、厚生労働省の研究班がCDの癌化サーベイランスの確立に取り組んでいます。UCとCDでは、いずれも癌発生率が非有病者に比べて高く、炎症の持続が発癌の危険因子の一つと考えられています7)

 

帝京大学医学部附属病院 IBDセンターにおけるGMAの適応

 GMAは腸管炎症に関与する顆粒球や単球を取り除く治療です。非薬物療法であるため、他の治療と併用しやすく、さらに複数の薬剤併用例や高齢者など特別な背景を有するIBD患者に対してもエビデンスが示されています8)。当院でも、薬剤による易感染性への考慮が必要な高齢IBD患者に対してGMAを導入しています。80歳代のUC患者に対してもGMAを選択しており、薬物療法の適用が困難な高齢者では早い段階からのGMA導入が選択肢の一つになるものと私は考えます。またGMAは、薬剤による感染症やアナフィラキシーショックなど重篤な合併症を考慮すると、高齢者はもとより、若年層においても導入しやすい治療の一つと捉えています。

 GMAはIBDに対して計10回が1連の治療となりますが、劇症UCでは計11回まで施行可能です。週2回でGMAを施行するintensive GMAは、症状の強い患者や重症例に加え、手術適応を見据えて速やかな効果判定が望まれるような場合の選択肢の一つと考えています。なお当院では、透析センターと連携して、体外循環治療に熟練したスタッフによりGMAを実施しており、安心してIBD患者を任せています。

 当院においてGMAを施行したUC39例をレトロスペクティブに解析したところ、GMAの前後でpartial Mayo scoreは6.2±1.4から1.8±1.8、排便平均回数は9.5±5.6から3.0±2.8と、いずれも有意な改善を示しました(p<0.0001)9)。そして、GMA前後のpartial Mayo scoreはステロイド併用の有無で差を認めず、ステロイド併用例の75%がステロイドフリーとなりました【】。

 IBD患者の予後改善に向けては、内科的治療と共に適切なタイミングによる外科的治療の実施も重要となります。そして、手術適応や周術管理を見据えた場合、非薬物療法であるGMAを試みる意義は大きいと考えます。薬剤が使い難い場合など、困った時のGMAとして今後も期待しています。

帝京大学_松田先生_図表.jpg

1) 松田 圭二 ほか:日本消化器病学会関東支部例会プログラム・抄録集. 2019;(354):47-47. (第354回日本消化器病学会関東支部例会, 2019年4月)
2) Matsuda, K. et al.:Surg Case Rep. 2020;6(1):250.
3) Matsuda, K. et al.:Clin J Gastroenterol. 2020;13(6):1189-1195.
4) 松田 圭二 ほか:臨床外科. 2019;74(2):232-237.
5) Ross, H. et al.:Dis Colon Rectum. 2014;57(1):5-22.
6) 松田 圭二 ほか:臨床外科. 2018;73(12):1316-1321.
7) 松田 圭二 ほか:日本臨牀. 2011;69(増刊号3):121-125.
8) Motoya, S. et al.:BMC Gastroenterol. 2019;19(1):196.
9) Matsuda, K. et al.:Inflamm Intest Dis. 2020;5(1):36-41.