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GMAのこれまでとこれから:GMAのクリニカルパール探求

Adacolumn Clinical Pearl

アダカラムインタビュー記事シリーズ

GMA 20年をこえる臨床知見からの提言

全国の先生方より、消化器および皮膚領域における最新の診療状況を踏まえた上で、様々な視点から顆粒球吸着療法(GMA)の日常診療における活用方法や工夫、メリットや課題についてお話いただきます。

IBD:炎症性腸疾患、UC:潰瘍性大腸炎、CD:クローン病、PP:膿疱性乾癬、PsA:乾癬性関節炎(関節症性乾癬)

※先生のご所属先および役職、治療指針等は掲載時点の情報です

広島県アダカラム
インタビュー記事シリーズVol. 21

多様化するIBD治療における患者主体の医療の重要性とGMAの意義

呉共済病院 消化器内科 医長
吉岡 京子 先生

IBD患者の日常や将来をサポートするために、多様化するIBDの治療選択肢の中から、患者個々の病態や生活に適合した医療の提供が求められています。そこで今回は、IBDにおける患者主体で考える医療の重要性と、その中でGMAに期待される点について伺いました。

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呉共済病院におけるIBD診療の実際

 当院の消化器内科では、内視鏡を使った検査や治療に注力しています。実際に、内視鏡による胃がん検査とH. pylori 感染との関係について世界をリードしてきた歴史もあり1)、現在でもH. pylori に関する知見を報告しています2)。炎症性腸疾患(IBD)治療においては、常に最新の治療法を試みると同時に、顆粒球吸着療法(GMA)など臨床経験の豊富な治療も併せて実施し、幅広い治療選択肢を提供しています。

 現在の患者数は潰瘍性大腸炎(UC)が約170人、クローン病(CD)が約40人で、年々増加している印象があります。IBD患者は体調が悪くて受診されているわけですから、特に外来ではスピード感を持った治療を心がけ、できるだけ外来受診当日に内視鏡検査やGMAなどを使った治療が施行できる体制を整えています【1】。

 近年はIBDに詳しい看護師、薬剤師、栄養士ら、パラメディカルスタッフを育成するため、勉強会を行うなどしてチーム医療にも積極的に取り組んでいます。これはIBD患者の増加を受けて、パラメディカルスタッフの発案によって開始されました。特に入院患者の場合、パラメディカルスタッフは患者と接する機会が多く、病気のこと、薬のこと、食事のことなど、医師が伝えきれなかった部分を補ってもらっています。外来でも、点滴をする場合は看護師が付き添い、不安などを聞き取って医師に伝えます。また、それらの経験に基づき、パラメディカルスタッフからの提案を受け、患者説明用のパンフレットも作成しています。

 当院の診療におけるモットーは、『50年後に振り返っても最善の治療方針』です。IBDは目の前の状態のみに対処すれば良いわけではありません。薬の選択においても、効果不十分な場合は次をどうするか、さらにその次をどうするかを考え、常に将来を見通した治療戦略を採るように心がけています。もちろん、IBD患者の人生にも配慮します。IBD患者が就学、就職、結婚、出産といったライフイベントを乗り越えられるようにサポートすることが重要であり、いくつもの人生の節目において、医療面から可能な限り寄り添い、支えていきたいと考えています。

 

UC治療選択肢が多様化する中でも重要性を増す既存治療

 近年、IBDに対する新薬が多種類上市されていますが、当院におけるUC治療の基本薬は、従来と同じく5-アミノサリチル酸(5-ASA)製剤です。内服薬のみならず局所製剤の併用も行い、効果不十分の場合は他の5-ASA製剤へのローテーションも試みます。なお、当院における検討では、UCに対する5-ASAの副作用は20%に認められたことから3)、事前にUC患者に対して副作用の十分な説明を行っています。そして初回投与時は1~2週間後に受診していただき、不耐を含めて副作用を確認しています。

 UCの寛解導入において、ステロイドも必要に応じてしっかりと使っています。ステロイド依存例や抵抗例に対して、他の治療に切り替える際、新薬によって治療の選択肢が広がったことを実感しています。なお、2020年以降のCOVID-19流行下では、JAPAN IBD COVID-19 Taskforceの提言などに基づき、ステロイドの高用量投与を避けるため、GMAをはじめとした他の治療との併用により、ステロイド投与量の抑制ならびに治療効果の底上げを図っています。

 

呉共済病院におけるGMAの活用

 安全性を考慮しつつ治療効果の底上げを期待したい場合、非薬物療法であるGMAは他剤とも併用しやすく、IBD治療において重要な選択肢の一つであると私は考えます。

当院では血液浄化室(透析室)において、GMAを施行しています。初回は平日に施行し、施行後に問題がないことが確認されれば2回目以降は土曜日や祝日でも可能です。患者が午前中に受診した場合、午後からのGMA施行も可能なため、初回GMAを施行するだけのために別の日に仕事や学校を休んでもらう必要はありません。

 外来でIBD患者にGMAを施行する際は、作用機序や副作用を詳しく説明して、GMAを受けるか否かの選択は患者本人に任せます。そしてご本人が決断したら、透析室の看護師に消化器内科外来まで来てもらい、血管を確認します【2】。また、GMA施行前にリドカインテープを貼るなど、穿刺時の疼痛を緩和する工夫も行っています。一方、当院では、入院患者に対して、早期の効果発現を期待し、週2-3回のintensive GMA を選択することが一般的です。入院中に治療回数を重ねておくことで、退院後の通院回数を減らすという目的もあります。 

 私が女医ということもあり、当院は比較的女性のIBD患者が多いように思います。就学、就職、結婚などの社会的なライフイベントは男女共通ですが、妊娠、出産、授乳は女性の身体的な事柄であり、不安に思われる方が多いのも実情です。そのようなIBD患者には、本来、午前中だけの外来を、午後に時間を取ってじっくりと話を聞くこともあります。そして後日、結婚や出産について報告されると、私も大変嬉しくなります。IBD患者の不安を解消し、長期にわたって相談に乗れるような医師でありたいと考えています。

呉共済病院_吉岡先生_図表.jpg

1) Uemura, N. et al.:N. Engl. J. Med., 345(11), 784-789, 2001
2) 吉岡 京子 ほか:日本消化器病学会雑誌, 115(suppl-2), A702, 2018 (第60回日本消化器病学会大会, 2018年11月)
3) 吉岡 京子 ほか:日本消化器病学会雑誌, 117(suppl-1), A286, 2020 (第106回日本消化器病学会総会, 2020年8月)