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GMA20周年特設ページ:GMA治療の歩みと可能性

Adacolumn 20th Aniversary

アダカラムインタビュー記事シリーズ

GMA 20年の臨床知見からの提言

全国のIBD専門の先生方から、最新のIBDにおける治療環境を踏まえた上で、様々な角度からGMAの日常診療における活用方法や工夫、メリットや課題をお話しいただきます。

奈良県アダカラム
インタビュー記事シリーズVol. 9

IBDの治療成績改善に向けたGMAの地域医療連携の意義

健生会 生駒胃腸科肛門科診療所 所長 増田 勉 先生 (写真中央)
医療法人 田中泌尿器科医院 事務長  松原 弘和  先生 (写真左)
翠悠会 高田診療所          奥田 剛 先生 (写真右)

IBDに対しては、従来の大学病院や中核病院を主とした診療体制に加え、クリニックが参加して地域医療連携のもとで診療を進める選択肢も広がりつつあります。これにより、IBD患者の利便性が向上し、より速やかな対応が可能になるなど、日常生活への影響が少ない医療の提供が期待されています。今回は、IBDの治療成績改善に向けて、消化器専門施設と透析施設によるGMAを活用した地域医療連携の意義について伺いました。

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生駒胃腸科肛門科診療所におけるIBD診療の実際

――生駒胃腸科肛門科診療所におけるIBD診療の特徴について教えてください。
増田先生:当院の特徴は、患者さんの学業や仕事などの日常生活および就職や結婚、出産といったライフイベントを支えるために、将来を見据えた診療で、入院や手術の回避を図っている点にあります。このため、比較的診療早期から治療を強化する場合が多く、集学的治療を行う上でGMAも重要な選択肢の一つとなっています。

 GMAの実施にあたっては、本日同席頂いている先生方の施設である田中泌尿器科医院や翠悠会高田診療所をはじめとして、多くの透析施設と積極的に地域医療連携を推進しています【】。これにより、intensive GMA(主に週3回GMAを実施)による治療の強化や、患者さんにとって通院時間の短縮や希望の時間に治療がおこなえる面から自由度の高いGMAの実施が可能となっています。特にGMAは、炎症増悪早期からの導入が有効と考えられるため、治療連携施設で即日の、しかも夜間にも対応いただけることは、当院における"早く強く"という治療方針の実現に大きく寄与しています。

――新型コロナウイルス感染症の流行下でGMAの実施やIBD診療に変化は生じましたか。
松原先生:私は透析施設の事務長の立場から、COVID-19対策に関わりましたが、腎不全あるいはIBDの患者さんは、いずれも易感染状態である可能性を考慮し、徹底した感染症対策を目指しました。具体的には、最初に非接触の体温計によるスクリーニングを行い、透析やGMA施行中のマスク着用を患者さんに強く依頼しました。そして、感冒様症状を呈した患者さん専用の時間帯を週3回設け、新たに簡易的な陰圧室も設置して、時間的および空間的隔離を行いました。

増田先生:当院へは、近畿地方から広く来院されているため、移動時におけるCOVID-19の曝露に対して不安を持つ患者さんも散見されました。しかし、IBDには継続した治療が必要であるため、感染症に対する不安を解消するために十分な説明を行った上で、特にステロイドの使い方に関しては、通常時以上に注意を払いました。

――通常時のIBD治療におけるステロイドの使用法について教えてください。
増田先生:元来ステロイドは、IBDの長期に及ぶ治療期間の中で、生涯の累積投与量がどの程度増加するかについて、予測困難なのが実情です。累積投与量が増加すると、副作用の発現率および重篤化リスクは上昇し、さらに、治療反応性が全般的に低下してしまう点が重要な課題になると捉えています。ステロイドに対する治療反応性が低下すると、生物学的製剤(Bio)など他の治療に対しても反応性が低下してしまい、炎症のコントロールが難渋化しやすい印象があります。

 ステロイドは、IBD治療において重要な薬剤ですが、気をつけなければならない副作用があるため、常に累積投与量の抑制を意識しながら、ステロイドの注腸製剤も活用することで経口による投与量の減少を図っています1)。さらに、非薬物療法であるGMAの併用による治療強化を積極的に行い、ステロイド投与開始から1カ月以内に早期離脱することを目指す治療方針が望ましいと私は考えます。これにより、治療選択肢の温存にもつながり、将来的な入院や手術の回避が期待できるのではないでしょうか。

――近年のIBD治療における留意点について解説いただけますか。
増田先生:自験例において、クローン病(CD)に対するBio投与中に中間期癌として直腸癌を認めたものの、右半結腸切除により癌は根治に至った可能性が高く、再発リスクは低いと判断してBioの再投与を行った経験があります2)。化学療法中や再発リスクの高い場合には、当然Bioは選択されませんが、比較的安定している状態の担癌患者さんや再発リスクの低い場合は、いわば"IBD with Malignancy(悪性腫瘍を伴うIBD)"の概念の下、IBD治療の継続を検討すべき時期が到来しつつあると考えています。

 

IBD治療における地域医療連携の意義と今後の展望

――透析施設においてGMAを実施する際の注意点について教えてください。
奥田先生:私たち臨床工学技士の腎不全に対する血液浄化療法の技術やノウハウは、GMAにおいても十分活用できることから、全国殆どの透析施設ではGMAの円滑な遂行が可能と考えています。その上で、10年を超えるGMAの臨床経験から3)、私たちが心がけているのは、消化器専門医とIBD患者さんの要望に対して、臨床工学技士がマネジメントを行い、GMAを安全に実施するための架け橋になることです。

 特に重要なのは、初回のGMA実施時であり、患者さんの不安感を軽減するため、事前にGMA治療の流れや施行時間について、写真を用いながら丁寧に説明を行っています。この、事前の説明がきわめて重要であり、2回目以降の治療時も、患者さんが疑問に思いやすい点について解説を行い、積極的にGMA治療に取り組んでいます。特にIBDでは、若い患者さんも多いことから、性差や年齢も考慮して担当者を決定するなど、信頼関係が構築されやすい環境づくりを目指しています。また、治療が無効で原疾患(IBD)の症状が悪化することには特に注意を払っており、速やかに消化器専門医へフィードバックできるよう入念な観察を行っています。

松原先生:当院でも、2009年からIBD患者さんの紹介を受け始めました。当初は、GMA施行時に毎回紹介元の施設へレポートをお返ししていたのですが、intensive GMAの保険適用やGMAの長年の臨床経験から、現在は10回もしくは11回実施の一連の治療完了時に報告しています。

 なお、腎不全の治療と異なり、IBD患者さんは一連の治療完了後、しばらく来院されなくなるため、GMA治療の効果など、その後の経過が気になるところです。今後、消化器専門医のいない施設でも測定可能な客観的指標として、カルプロテクチン等のバイオマーカーの数値を共有化することで、地域医療連携による治療アウトカムを共有し、GMAの適切な介入時期や施行頻度など、個々の患者に適した治療条件に関するエビデンスを構築していければと考えています。

――今後のGMAの地域医療連携の方向性について解説をお願いします。
増田先生:県内でも住民が特に多い奈良県北西部では、GMAの地域医療連携が進み、患者さんの利便性は向上しているのですが、様々な新薬の登場により選択肢が多様化し、私たちがGMAを勧めても、薬剤での治療を求める患者さんも珍しくありません。しかし、Bioなどの新薬は、まさに現在進行形で臨床知見が集積されているところであり、例えば悪性腫瘍などに対する長期的な影響については、今後明らかになっていくと推察されます。一方GMAは、既に20年の臨床経験を有しており、有効性および安全性に関するデータが蓄積されています。

奥田先生:確かにこれまでの経験上、GMAの治療中や治療後で大きなトラブルを認めたケースは殆どありません。ただし、GMAは穿刺から返血までを含めると約90分の治療時間を要するため、患者さんに特徴を十分理解いただいた上で施行されるべき治療と考えます。GMAの特徴や意義に関して、私たちの説明が乏しいと、治療時間や穿刺痛への不満につながる可能性も危惧されます。

 今後、GMAの地域医療連携は全国的に推進されていくものと思われますが、その際は透析施設の臨床工学技士や看護師がIBDに関して基礎知識を学んだ後、臨床において実践可能な疾患の理解を深めるためにも、消化器専門医と積極的にコミュニケーションを図ることが重要ではないでしょうか。まずは、一人でもIBDに精通する医療スタッフを施設に確保できると、おのずと施設全体にIBDへの理解が浸透することが期待されます。

松原先生:当院は、モンゴルやベトナムにおいて、日本式透析の技術支援を行っていますが4)、近年、治療の安全性に対する意識が顕著に向上している印象があります。今後、奈良モデルあるいは生駒モデルとして、私たちの地域医療連携のノウハウが広がって行くことに期待しています。

増田先生:欧米においても、IBD治療における安全性に注目が集まっており、Bioではベドリズマブやウステキヌマブが優先的に使用されつつある印象を持っています。ただし、これらのBioは、立ち上がりに時間を要する場合もあることから、効果が発現してくるまでの期間を補うための選択肢の一つとしてGMAの併用が有用であると私は考えます。

 IBD治療の最終的な目標は、決してその場その場の炎症制御ではなく、患者さんの生涯を見越した治療、すなわち患者さんが望むライフイベントの全てに備える点にあり、それこそが最大のエンドポイントと捉えています。そのために、GMAの地域医療連携も最大限に活用しながら、入院や手術の回避を目指す治療を今後も継続していきたいと考えています。

生駒胃腸_図表.jpg

1) 増田 勉, 吉川 周作:日本消化器病学会近畿支部例会プログラム・抄録集, (110), 65, 2019 (第111回日本消化器病学会近畿支部例会, 2019年10月)
2) 増田 勉 ほか:日本消化器病学会雑誌, 114(suppl-1), A334, 2017 (103回日本消化器病学会総会, 20174)
3) 奥田 剛 ほか:奈良県医師会透析部会誌, 15(1), 124, 2010
4) 松原 弘和 ほか:日本血液浄化技術学会雑誌, 26(suppl), 112, 2018 (第45回日本血液浄化技術学会学術大会・総会, 2018年3月)