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GMAのこれまでとこれから:GMAのクリニカルパール探求

Adacolumn Clinical Pearl

アダカラムインタビュー記事シリーズ

GMA 20年をこえる臨床知見からの提言

全国の先生方より、消化器および皮膚領域における最新の診療状況を踏まえた上で、様々な視点から顆粒球吸着療法(GMA)の日常診療における活用方法や工夫、メリットや課題についてお話いただきます。

IBD:炎症性腸疾患、UC:潰瘍性大腸炎、CD:クローン病、PP:膿疱性乾癬、PsA:乾癬性関節炎(関節症性乾癬)

京都府アダカラム
インタビュー記事シリーズVol. 37

IBDに対する地域医療連携の推進とGMA施行の実際

医療法人幸生会 室町病院 院長
西村 幸晴 先生(写真左)

京都大学医学部附属病院 消化器内科 特定病院助教
(現 関西医科大学内科学第三講座 講師)
本澤 有介 先生(写真右)

急性期診療を担う中核施設と、初期診断や回復期、寛解期の診療を担うプライマリケアとの地域医療連携によって、切れ目のない細やかな医療の提供や医療資源の最適化が図られています。しかし、IBD診療においては、診療の難しさに加えプライマリケアにおける診療機会の少なさなどから、地域医療連携は十分に進んでいないのが実情です。そこで、IBDに対する地域医療連携を積極的に推進されている大学病院および地域に根差した病院の医師から、連携の意義やノウハウについてお話を伺いました。

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京都大学および室町病院におけるIBD診療の考え方
――京都大学および室町病院のIBD診療における特徴を教えてください。
本澤先生:京都大学は、急性期医療はもとより研究や教育も担う京都の基幹施設と考えます。炎症性腸疾患(IBD)においては、クローン病(CD)の線維化病態形成へのアプローチ1)や潰瘍性大腸炎(UC)の内視鏡的粘膜評価の定量化2)など、基礎から臨床まで幅広く、多岐にわたる研究を行っています。

西村先生:室町病院は、京都市上京区に根差して、地域医療を担う病院です。IBDに対しては、下部内視鏡に加え、京都大学などと連携しながら顆粒球吸着療法(GMA)を積極的に施行しています。IBD患者さんは、若年発症の高齢移行患者さんが増加しており、加齢を考慮した全人的医療を心掛けています。

本澤先生:高齢IBD患者さんは、生理的予備能の低下や易感染性、併存疾患などへの注意が必要となり、治療に苦慮する場合も少なくありません。また、高齢発症のIBDを疑う場合、鑑別診断が難しく、確定までに時間を要するのが実情です。そのような高齢発症のIBD疑い例の紹介を受ける際は、地域の病院における治療歴や若年時の状況といった患者背景を知ることが重要であり、この点からも地域医療連携における円滑な情報共有が必要と考えます。

 

IBD診療における近年の傾向と課題、留意点
――IBD治療における選択肢の多様化に伴って、治療に変化は生じましたか。
本澤先生:分子標的薬の登場後も、IBD治療の基本治療薬である5-アミノサリチル酸(5-ASA)製剤の位置付けに変化はありません。ステロイドも同様であり、治療指針ならびに診療ガイドラインにおいて提示されているように、5-ASA製剤のみでは十分な効果が得られない場合、次の選択肢として重要な薬剤です。ただし、ステロイドの投与方法に関しては、コロナ禍において漫然とした長期投与を避けるため、早期の治療反応性の評価がより一層意識されるようになったと考えます。

西村先生:地域医療連携の推進に向けた研究会などにて、京都大学の先生方からステロイドの投与方法に関して、重要な薬剤だけに注意が必要と教示されています。当院において、特に高齢IBD患者さんに対しては、併存疾患や易感染性を鑑みて、ステロイド投与を検討するような場合は、事前に本澤先生へ相談を行っています。この早めの相談による綿密な連携は、IBD患者さんの不安軽減にも寄与しており、当院に対する信頼感の向上につながっていると捉えています。

本澤先生:ステロイドを投与する際は、次の治療ステップについて考慮しておく必要がありますが、ステロイド抵抗例や依存例といった難治例に対する様々な分子標的薬の登場は、病態改善はもとより、選択肢が多い点からIBD患者さんの心理面にも余裕を与えているのではないでしょうか。一方、これら薬剤の優先順位が明確化されていない現況下において、実臨床では治療選択に迷いが生じやすいのも実情です。重篤な副作用を経験した薬剤は医師にとっても印象に残りやすいため、当該薬剤を避け、他剤を選択する傾向にないかなど、自らを客観視しながら治療に臨む必要があると考えます。

西村先生:IBD治療では感染症への留意は重要であり、発熱や呼吸の状態によってはX線よりも胸部CTを優先して実施するケースも少なくありません。また、高齢者において軽度の倦怠感を訴える場合は、感染症の兆候であることも疑われますが、心不全の合併も考慮する必要があるため、これらの除外診断の観点から胸部CTが有用と考えます。

 

IBD治療における非薬物療法としてのGMAの意義
――IBD難治例を中心とした選択肢が増加する中、GMAの意義について教えてください。
西村先生:GMAに関しては、当院へ通院中のIBD患者さんに加え、京都大学との連携による紹介患者さんも多く、豊富な臨床経験を積むことができました。GMAは、複数の薬剤併用例や高齢者など特別な背景を有するIBD患者さんに対するエビデンスが示されており3)、私も安全性への考慮が必要な場合に適した選択肢の一つと考えています。非薬物療法であるため、GMAは他の治療への影響が小さいものと類推され、幅広い年齢層における施行も可能ですが、抗凝固剤に対するアレルギーには注意が求められます。

 

IBD診療における地域医療連携の実際と今後への期待
――IBD診療における地域医療連携の課題と対策について解説いただけますか。
本澤先生:IBD患者数は増加傾向にありますが、それでも罹患率は低いため、地域の医療施設では診療を経験する機会が多いわけではありません。また、診断と治療の双方が難しい疾患であり、IBD患者さんも専門性の高い施設での診療を望む傾向にあると考えます。しかし、IBD患者数の更なる増加に対して、専門施設のみで診療を行うには限界があります。

 そこで、5-ASA製剤のみで病勢のコントロールが可能な患者さんの診療や、感冒などのcommon diseaseへの対応は、地域の施設へ依頼できるような医療連携体制の構築が望まれていました。このような状況下、西村先生が院長を務められる室町病院との連携が始まり、GMAの施行を含め、私たちの依頼を快く受け入れていただいていることを非常にありがたく感じています【】。

西村先生:私は元来、消化器内科が専門ではなかったのですが、担当患者さんの消化器疾患合併率が高かったことから、近隣の基幹病院の協力を得て、上部および下部内視鏡検査の技能習得を図りました。この際、UC患者さんの診療を担当する機会をいただき、私が透析治療の経験を有していたため、当時の上長よりGMA施行を勧められました。そこで初めてGMAを施行したのですが、構造が明確かつシンプルであり、これは自分の治療として扱っていけることを確信しました。その後は、軽症例を中心にIBD診療の研鑽を図り、現在、本澤先生の京都大学と【】に示していただいた体制で、連携を推進しています。

本澤先生:医療連携により、IBD患者さんにおける感冒などのcommon diseaseを西村先生に診療いただいている意義はきわめて大きいと考えます。GMAの連携を契機として室町病院を訪れたIBD患者さんの中には、夕刻以降や土曜日の通院が可能であるという利便性に加え、common diseaseも診てもらえるという安心感や信頼感があるようで、再燃時は再び室町病院におけるGMAを希望される方もいらっしゃいます。そして、IBD患者さんからは「二人の主治医に担当してもらっているので安心」との感想を多くいただきます。2022年1月よりGMAはUCの維持療法に対して保険適用されたため、現在はUC維持療法についても引き続き西村先生へ依頼しています。

西村先生:現在、当院では3名の看護師とのチーム医療のもとで、GMAを施行しています。看護師自らが文献などでIBDを積極的に学んでおり、GMA施行中は、IBD患者さんの様子を観察しながら症状などのヒアリングを行っています。今後、Web会議などを活用して、地域施設と基幹病院とで合同カンファレンスのような情報共有を行うことが出来れば、さらに良好な連携体制が構築できるのではないかと考えています。

本澤先生:IBD治療において、GMAは必要不可欠な選択肢の一つであり、かつIBDに対する地域医療連携のパイロットケースとして、京都大学と室町病院の連携体制は、西村先生の講演などによって広く周知される意義が大きいと考えます。そして、地域医療連携が全国に広がり、それぞれの施設における役割分担が明確化されることで、患者満足度や治療成績の向上にも繋がるものと期待しています。

京大 本澤先生_室町 西村先生_図表.jpg

1) Honzawa, Y. et al:Gut. 2014;63(12):1902-1912.
2) Honzawa, Y. et al.:Endosc Int Open. 2020;8(1):E41-E49.
3) Motoya, S. et al.:BMC Gastroenterol. 2019;19(1):196.