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GMA20周年特設ページ:GMA治療の歩みと可能性

Adacolumn 20th Aniversary

アダカラムインタビュー記事シリーズ

GMA 20年の臨床知見からの提言

全国のIBD専門の先生方から、最新のIBDにおける治療環境を踏まえた上で、様々な角度からGMAの日常診療における活用方法や工夫、メリットや課題をお話しいただきます。

埼玉県アダカラム
インタビュー記事シリーズVol. 27

特殊背景(妊婦/高齢者)を有するIBDに対する治療戦略とGMAの意義

防衛医科大学校 内科学(消化器) 教授
穂苅 量太 先生

IBDは若年層に好発するため、女性の場合には妊娠・出産適齢期と重なることが問題となります。また高齢化社会に伴い、高齢IBD患者数が近年増加傾向にあります。妊婦や高齢者、いわゆる特殊背景を有するIBD患者への治療は、感染症のリスクをはじめとして、安全性の考慮がより一層求められます。そこで今回は、妊婦と高齢者の治療における留意点に加え、消化器領域全般とIBDにおいて注目されているTopicについて併せて解説いただきました。

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防衛医科大学校病院における消化器領域研究の現況

 防衛医科大学校病院における消化器領域の研究としては、セリアック病や好酸球性食道胃腸炎などの自己免疫疾患に対して、微小循環や消化器免疫の観点からアプローチを行っています。特に近年は、過敏性腸症候群(IBS)をはじめとする脳腸相関や、かゆみの刺激が消化管に与える影響などの皮膚腸相関にも注目しています。

 腸は発生学的に、初期に形成される臓器であるため脳との相関が強く、脳と腸に共通するホルモンも少なくありません。このため、様々なストレスが良くも悪くも腸に影響を与えます。さらに腸は免疫において重要な役割を果たしており、脳と腸の間で情報伝達が行われています。IBSでは、この情報伝達の機能調整に異常が生じると考えられており、ストレスが消化管に微小な炎症を惹起することも判明しつつあります。この神経系と腸の間に、第三の臓器ともいわれる腸内細菌叢も関与して、IBSなどの腸疾患の病態を形成しています。

 IBSは患者数が多く、自衛官も例外ではありません。私たちは、ストレスによるIBSの悪化が自衛官の業務遂行能力の低下を導くことに着目し、自衛隊看護学生を対象としたプロバイオティクスや食事内容による機能性消化管障害の発症抑制効果について無作為化比較試験を実施しています。今後、アトピー性皮膚炎や喘息などのアレルギー疾患においても、腸内細菌叢の関与について検討を進めたいと考えています。これらIBSやアレルギー疾患の改善は、社会全体の生産性向上に寄与する可能性があり、ストレスに対する復元力や回復力、すなわちレジリエンスの提案につなげたいと期待しています。

 

IBD病態における炎症細胞の遊走と制御

 リンパ球は、約6割が小腸に分布するとされており、微生物などの抗原に対する防御を担っています1)。そして、リンパ球は抗原と遭遇することによりはじめて活性化するため、同じ場所には留まらず、炎症がなくても常に全身を移動して、抗原との遭遇機会を増やしています。そして興味深い点として、腸から流出したリンパ球には、血管に入り全身を巡っても、必ず腸に戻ってくる"ホーミング現象"と呼ばれる特徴があります。この現象の分子学的機序として、腸管に戻るリンパ球とそうではないリンパ球では、接着分子の発現に相違があることが分かってきました。

 腸管関連リンパ組織に特異的に発現する接着分子としてMAdCAM-1があり、このリガンドとしてリンパ球に発現する接着分子がα4β7インテグリンです。これらは臓器特異性接着分子と呼ばれ、皮膚や肺などの非消化管にMAdCAM-1は発現せず、α4β7インテグリン陽性のリンパ球は、非消化管には分布できません。私たちは、潰瘍性大腸炎(UC)モデル動物におけるMAdCAM-1の発現亢進と、抗MAdCAM-1抗体の投与による粘膜保護などを2001年に報告するなど2)、従来から積極的に接着分子の研究を行ってきました。

 リンパ球は分化の際に高濃度のレチノイン酸(ビタミンA誘導体)が存在すると、α4β7インテグリンが強く発現することが判明しています。新興国において、腸管感染症は未だ生命予後への影響が大きい疾患ですが、ビタミンAの摂取により、そのリスクは軽減するとされています。この背景には、リンパ球が腸管へα4β7インテグリンを介して浸潤しやすくなることが類推されます。逆に炎症性腸疾患(IBD)などでは、ビタミンAを阻害することにより、リンパ球の腸管への浸潤を抑制できる可能性があります。

 食品の中には、ビタミンA合成酵素を阻害する成分を含有するものがあり、その代表的な物質であるシトラールは、トムヤンクンなどのタイ料理に用いられるレモングラスに高濃度で含まれています。そこで、クローン病モデル動物に対してレモングラス溶液を投与したところ、β7インテグリンの発現低下と回腸微小血管におけるリンパ球の接着能低下、回腸における炎症の改善が認められました3)

 このようにIBDの炎症抑制においては、様々なアプローチが存在します。GMAは、活性化した顆粒球を吸着除去する量的な変化に加え、カラム通過後の白血球における接着分子の発現低下や炎症性サイトカインの産生能低下などの質的な変化が報告されています4-6)。さらに、GMA後は樹状細胞による教育を受けていない未熟で接着能の低い白血球が、末梢に動員される作用7,8)の意義が大きいのではないかと私は考えます。

 

特殊背景(妊婦・高齢者)を有するIBDにおける留意点

 IBDは若年層に好発するため、女性の場合には妊娠・出産適齢期と重なることが問題となります。一方、高齢化社会に伴い、高齢IBD患者数が近年増加傾向にあり、日常診療において遭遇機会も少なくありません。これら背景を有するIBD患者の診療における留意点をまとめました【9,10)

 まず妊婦に関してですが、結婚されている方はもとより、若い方を中心に多くの女性に対して妊娠前に、疾患が胎児へ与える影響について説明しておくことが望まれます。また、免疫調節薬が有益性投与に変更となり、これまで以上に患者の状態を入念に観察して、薬剤の中止や継続の判断が求められるようになりました。ここで留意すべき点として、私たち消化器内科医は流産や奇形に気を取られがちですが、産婦人科医の立場からは、出産時の安全性や出産後の成長を考慮すると、胎児の体重減少について十分な注意が必要とのことでした。従って、胎児の栄養状態への影響を考えても、妊娠中のIBDのコントロールはきわめて重要となります。

 次に、高齢IBD患者についてですが、UCでは若年発症後に高齢に移行した場合に比べ、高齢発症の場合は罹患範囲が広く、より重症化あるいは難治化しやすい点に注意が求められます11)。そして高齢発症のUC患者では、サルコペニアやフレイルとも関連する栄養指標の一つGNRI(Geriatric Nutritional Risk Index)が低下すると、UCの活動性は上昇することが認められました12)。UCは自己免疫疾患であるため、若くて栄養状態の良い方が免疫が暴走しやすい印象もあるかもしれませんが、実際には逆であることに留意する必要があります。

 高齢IBD患者に対しては、担癌患者を含む併存疾患の多さや強い免疫統御療法による感染症のリスクなども考慮して治療方針を決定する必要があります13)。また、高齢者は緊急手術において肺炎などの合併率が高く、予後に大きく影響します。このため、特に高齢発症や低栄養状態を背景に有するIBD患者では、手術を回避するための治療強化と安全性のバランスに苦慮することも少なくありません。そのような場合、GMA集中治療は治療強化のための選択肢の一つであると私は考えています。

 GMAを含む血球成分除去療法(CAP)に関して、平成30年度の『潰瘍性大腸炎治療指針 supplement ─高齢者潰瘍性大腸炎編─』においては"高齢UC患者にCAPを施行した場合の副作用発現率は非高齢UC患者と差はなく、安全に施行できる"と記載されています。非薬物療法であるGMAは、高齢者など薬剤が使用しにくい状況においても導入しやすい選択肢の一つ14)ではないかと期待しています。

防衛医大_穂苅先生_図表.jpg

1) 穂苅 量太, 東山 正明:日本内科学会雑誌. 2020;109(3):465-470.
2) Hokari, R. et al.:Clin Exp Immunol. 2001;126(2):259-265.
3) Watanabe, C., Hokari, R. et al.:Microcirculation. 2010;17(5):321-332.
4) Ramlow, W. et al.:J Clin Apher. 2005;20(2):72-80.
5) Takeda, Y. et al.:Inflamm Res. 2004;53(7):277-283.
6) Shimoyama, T. et al.:J Clin Apher. 2001;16(1):1-9.
7) 柏木 伸仁 ほか:炎症と免疫. 1999;7(4):371-377.
8) Kashiwagi, N. et al.:Dig Dis Sic. 2002;47(6):1334-1341.
9) 穗苅 量太 ほか:日本消化器病学会雑誌. 2020;117(3):230-236.
10) 穗苅 量太 ほか:日本急性血液浄化学会雑誌. 2017;8(1):10-14.
11) Komoto, S. et al.:J Gastroenterol Hepatol. 2018;33(11):1839-1843.
12) Higashiyama, M. et al.:J Gastroenterol Hepatol. 2021;36(1):163-170.
13) 穗苅 量太:IBD Research. 2019;13(4):241-244.
14) Motoya, S. et al.:BMC Gastroenterol. 2019;19(1):196.