福井県アダカラム
インタビュー記事シリーズVol. 26
IBD治療における選択肢の多様化とGMAを含む既存治療の再評価
福井大学医学部附属病院 光学医療診療部 准教授
平松 活志 先生
COVID-19の流行を契機として、IBD治療における感染症対策が、より一層求められています。そこで今回は、分子標的薬の登場など治療選択肢が多様化する中で、感染症をはじめとした新たな課題への対応とこのような状況下におけるGMAの可能性について伺いました。
医療関係者の方へ
アダカラムインタビュー記事シリーズ
全国の先生方より、消化器および皮膚領域における最新の診療状況を踏まえた上で、様々な視点から顆粒球吸着療法(GMA)の日常診療における活用方法や工夫、メリットや課題についてお話いただきます。
IBD:炎症性腸疾患、UC:潰瘍性大腸炎、CD:クローン病、PP:膿疱性乾癬、PsA:乾癬性関節炎(関節症性乾癬)
※先生のご所属先および役職、治療指針等は掲載時点の情報です
福井大学医学部附属病院 光学医療診療部 准教授
平松 活志 先生
COVID-19の流行を契機として、IBD治療における感染症対策が、より一層求められています。そこで今回は、分子標的薬の登場など治療選択肢が多様化する中で、感染症をはじめとした新たな課題への対応とこのような状況下におけるGMAの可能性について伺いました。
福井大学医学部附属病院では、消化器内科医師14人体制で炎症性腸疾患(IBD)患者さんの診療を行っています。外来患者数はクローン病(CD)が約30名、潰瘍性大腸炎(UC)が約60名で、いずれも近年増加傾向にあります。大学病院という性格上、他施設で治療に難渋した症例をご紹介いただくことも多く、寛解導入時に入院を要する症例も増えています。
一方、当院では内視鏡診療にも注力しています。2001年に全面改修された光学医療診療部において常に最新の機器による診療を行っており、ESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)の新デバイスの検証1)やEUS-FNA(超音波内視鏡下穿刺吸引法)など高い技術を要する手技を積極的に導入しています。一方、小腸疾患の内視鏡診療も充実しております。カプセル内視鏡4台、ダブルバルーン内視鏡2台、シングルバルーン内視鏡1台を保有し、これらを駆使することで、IBDに対する適格な診断と治療が行われています。また、2017年には光学医療診療部に次世代シークエンサーを導入し、がんの個別化医療や腸内細菌の研究に取り組み、IBD関連の国際共同臨床試験にも積極的に参加しています。
IBD治療における重要なトピックとして、5-アミノサリチル酸(5-ASA)製剤への不耐例が挙げられます。昨年、当院でも3例の不耐例を経験しました。皮疹やかゆみなどのアレルギー症状が出現している場合は不耐と認識されやすいのですが、下痢の増悪などの場合はIBDの症状と鑑別が困難なため、気付くのが遅れたり、診断に苦慮する症例が少なからず存在します。5-ASA製剤は重要な基本治療薬ですが、常に不耐の可能性を念頭に置いて治療に臨んでいます。
一方、COVID-19感染症の流行によって、「ステロイドをどのように使うか」という話題がより一層注目されています。特にIBD患者さんは、自分の免疫力のことを非常に気にかけており、治療方針の立案にあたってはJAPAN IBD COVID-19 Taskforceの見解も参考にしながら、最適用量での処方・減量を心がけています。例えば、全大腸型UCで中等症以上の患者さんでは、ステロイド投与(1mg/kg)による速やかな寛解導入が非常に有効です。ただし、COVID-19感染症の流行下では、最初に5mg/週のペースで20mgまで減量し、その後は5mg/2週で減量することによって、早めにステロイド・フリーとなるよう心掛けています。
難治性UCの場合、その時点で生物学的製剤(Bio)を検討しますが、炎症が強い症例でない場合は、抗TNFα抗体製剤は温存して、抗IL-12/23抗体製剤、抗α4β7インテグリン抗体製剤、JAK阻害剤などを順次試みるようにしています。それぞれの薬剤の効果に個人差があるのも確かですが、症例によっては様々な作用機序の治療を数多く試すことが必要な場合もあります。また、効果減弱例(LOR)についても、あまり粘ることなく薬剤のスイッチを検討しています。実際の現場では、内視鏡像をこまめに確認しながら治療法を検討することが重要であることは間違いないのですが、患者さんの「効いているような気がする」とか「いまひとつ」などの言葉を大切に拾いながら効果判定の参考にすることが必要な場合もあります。
一方、Bioでは予期せぬ副作用を経験することがあります。特に皮膚関連の副作用は注意が必要です。ある患者さんは、3年前から抗TNFα抗体製剤を投与していましたが、突然四肢に結節性紅斑が出現しました。鑑別疾患として分子標的薬によるパラドキシカル反応や結核菌による皮疹が挙げられるのですが、これら二つの病態は治療方針が大きく異なります。皮膚生検の結果、パラドキシカル反応と診断され、直ちにステロイド薬の投与が開始されました。とても教訓的な症例であり、皮膚科との連携が非常に重要であると感じました。
当院では血液浄化療法部の協力のもと、入院・外来のいずれにおいても顆粒吸着療法(GMA)を導入できる体制が整っています。また、他施設との連携でGMAを施行することも可能であり、日頃より当院の血液浄化療法部と連携のある施設であれば、よりスムーズに導入できると思われます。
GMAを開始した患者さんが、一回目のGMA治療後に「効いているような気がする」と話されることがあります。いくら何でも効果の出現が早すぎると思われがちですが、このような患者さんで実際に非常に良い経過をたどることが多いのも事実であり、注目しています。一方、数回の施行後に十分な効果が得られない場合でも、遅発的に効果発現を認めるケースもあるため、私は可能な限り10回継続するようにしています。GMAが効果的な患者さんはどのような臨床的特徴を有するのか、またGMAを併用するとすればどのような治療法との相性が良いのか、治療選択肢が多様化していく中で今後も引き続き検討していきたいと考えています。
また、GMAはCOVID-19感染症の流行下において、今一度見直されるべき治療法と捉えています。血液浄化療法においては、従来より充分な感染症対策がなされているため、患者さんも安心してGMAを受けることができます。さらに、GMAはウイルス感染の防御に必要なT細胞やB細胞などのリンパ球をほとんど吸着しないことから、COVID-19に対する獲得免疫を阻害する可能性が低いと推察されています【表】。また、アダカラムに関しては、臨床試験や市販後調査で報告された主な副作用として頭痛や嘔気/悪心などが添付文書に記載されているのみであり、使いやすい製品であると考えられます。
従って、感染症や安全性に対して充分な対策が必要となる症例では、これまで以上に患者さんから理解が得られやすい治療であると言えるのではないでしょうか。また、治療効果を底上げしたい場合や特殊な背景などから薬剤を投与しにくい症例などに対してGMAは重要な選択肢の一つになると思っています。さらに、Intensive GMA(週2回でGMAを実施)では速やかな効果発現も期待できるため2,3)、例えばBio製剤の効果が減弱してきた際に、Intensive GMAを併用することによって治療効果を底上げできるのではないか4)、と考えています。
1) Hiramatsu, K. et al.:Surg Endosc. 2021;35(7):3600-3606.
2) Sakuraba, A. et al.:Am J Gastroenterol. 2009 ; 104(12) : 2990-2995.
3) Yoshimura, N. et al.:BMC Gastroenterol. 2015 ; 15 : 163.
4) Yokoyama, Y. et al.:J Crohns Colitis. 2020 ; 14(9) : 1264-1273.
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