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GMAのこれまでとこれから:GMAのクリニカルパール探求

Adacolumn Clinical Pearl

アダカラムインタビュー記事シリーズ

GMA 20年をこえる臨床知見からの提言

全国の先生方より、消化器および皮膚領域における最新の診療状況を踏まえた上で、様々な視点から顆粒球吸着療法(GMA)の日常診療における活用方法や工夫、メリットや課題についてお話いただきます。

IBD:炎症性腸疾患、UC:潰瘍性大腸炎、CD:クローン病、PP:膿疱性乾癬、PsA:乾癬性関節炎(関節症性乾癬)

※先生のご所属先および役職、治療指針等は掲載時点の情報です

山梨県アダカラム
インタビュー記事シリーズVol. 53

地域中核病院IBDセンターにおける 多科/多職種連携の実際とGMAの展望

山梨県立中央病院院長, IBDセンター統括部長,消化器病センター長
小嶋 裕一郎 先生

IBD診療では、患者さん一人一人の人生に長期間寄り添い続ける必要があることから、医師をはじめとして、専門性の高い看護師や薬剤師、栄養士などによる総合的な対応が求められます。そのため、IBD診療のセンター化が重要であり、さらに腸管外合併症への対応やGMA施行などにおける積極的な多科連携が必要となります。そこで今回は、IBDセンターにおける多科/多職種連携の円滑な推進に向けたポイントについて解説いただき、併せて今後のGMAの展望についてお話を伺いました。

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山梨県立中央病院のIBD治療において注力している点

――山梨県立中央病院の特徴とIBD診療の実際について教えてください。

小嶋先生:当院は、山梨県における中核病院として、裾野の広い地域医療を支えてきました。炎症性腸疾患(IBD)の診療では、県内における患者占有率が高く、2023年3月末時点で山梨県内の特定医療費(指定難病)受給者の潰瘍性大腸炎(UC)41.8%(259/620名)、クローン病(CD)55.9%(109/195名)でした。指定難病の非認定患者を含めると、2022年度はUC 440名、CD 123名の診療を行っています。IBD患者数は今後も増加が予測されることから、より多くの患者さんに、より良いIBD診療を行うため、2022年4月に甲信越地方初となる"炎症性腸疾患センター"を設立しました。

 

 一方、当院には遺伝子研究の専任スタッフを擁する"ゲノム解析センター"があり、IBD研究においても力を発揮しています。その一つがNUDT15 遺伝子多型とチオプリン製剤の安全性との関係であり、Exon 3の変異型ホモ(Cys/Cys), ヘテロ型(Arg/Cys)のみならず、Exon 1のSNPでも、長期的には安全性に注意が必要となる点などを報告してきました1)。今後も、IBD診療のハイボリューム施設としての特徴を活用して、患者さん一人一人に適合した個別化医療の推進に向けて、遺伝子研究を続けていきたいと考えています。

 

 

IBDに対する治療選択肢の多様化とGMAの位置付け

――近年のIBD診療の変遷や傾向について教えてください。

小嶋先生:近年のIBD診療は、生物学的製剤(Bio)など治療選択肢が増えましたが、5-アミノサリチル酸(5-ASA)製剤やステロイドなど既存治療の重要性に変化はありません。特にUCに対しては、まず5-ASA製剤を十分量投与し、それでも効果不十分な場合はステロイドを投与しています。ステロイド投与後は、速やかな漸減を図りますが、炎症の持続や再燃の兆候を認めた際は、顆粒球吸着療法(GMA)併用による治療強化を行う場合もあります。

 

 UCのステロイド依存例では、NUDT15 遺伝子多型検査を実施した上でチオプリン製剤を投与しています。チオプリン製剤の用量は、白血球数を指標として調整を行い、5-ASA製剤との併用によりステロイドフリーの寛解維持を目指しますが、再燃を繰り返す場合は、GMAやBioを検討します。

 

――GMAやBioを選択される際の注意点はありますか?

小嶋先生: Bioに関しては、患者さんの投与法への希望やライフスタイル、病態に鑑みて治療を選択しています。抗TNFα抗体製剤は、HAYABUSA study2)において示されたように、休薬すると再燃率は上昇します。この試験では投与再開により、再びコントロールが得られましたが、たとえ内視鏡的寛解に至っていても休薬のリスクを認めた点から、現状ではBioの長期投与が一般的と考えられます。長期に及ぶBio投与中は、感染症をはじめとした安全性への十分な配慮が求められ、実際に当院では抗TNFα抗体製剤の投与開始4年後に、アスペルギルスによる副鼻腔真菌症の発症例を経験しています。再燃リスクの一方で、このような課題もあることから、長期的に投与を継続するか、あるいは休薬するかを適切に見極めることが重要です。

 

 また、Bioの長期投与では、効果減弱(LOR)も課題となります。CDに対する抗TNFα抗体製剤のLOR対策として、チオプリン製剤の併用による中和抗体の産生低下がSONIC study3)において報告されています。当院でも基本的に両薬剤を併用していますが、NUDT15遺伝子多型や肝脾T細胞リンパ腫などの観点から、チオプリン製剤の併用が難しい場合もあります。そのような場合、GMAはPAdLI study4)において、抗TNFα抗体製剤のLORにおける中和抗体濃度の有意な低下が示されており、期待できる選択肢の一つと考えます。

 

 

IBD治療における多科/多職種連携の意義

――GMAを含むIBDの集学的治療を行う際のポイントや今後の展望について教えてください。

小嶋先生:当院におけるGMAは、血液浄化センターにおいて腎臓内科医、臨床工学士の管理のもと実施しています。近年のIBD診療では、このような多科/多職種連携による集学的治療が、より一層重要視されています【】。当院では各診療科の垣根が低く、医療スタッフがお互いに協力的なため、例えば腸管外合併症に対して、結節性紅斑や壊疽性膿皮症は皮膚科、ぶどう膜炎は眼科など、様々な診療科における迅速な対応が可能です。さらに、小児IBDに対しては小児外科とも連携を図り、小児の下部内視鏡では麻酔科も加わるなど、理想的な体制が整備されていると思います。

 

 近年のIBD治療では、チオプリン製剤やカルシニューリン阻害剤などの細やかな用量調整や、分子標的薬の多様化などから、薬剤師の役割が重要になっています。看護師も同様に重要で、IBDでは学習すべきポイントや、患者さん、ご家族に寄り添った看護サポートが必要です。また、IBD治療が多様化した現在でも、栄養食事療法は治療成績やQOLに大きく関わるだけに、栄養士の重要性に変化はありません。

                                                                                                                

 今後のIBD診療では、個別化医療や根治療法の開発に期待が集まっています。しかし、その実現までは薬物療法や栄養療法、GMAなどを組み合わせた集学的治療を、長期にわたって患者さんに提供し続ける必要があります。このため治療方針を決定する際は、患者さんに対して、ご自身の意思を十分尊重し、ライフスタイルに沿った治療を共に考えていくことが求められます。IBD患者さんの人生に長期間寄り添うために、多科/多職種連携のもとスタッフ全員が信頼関係の構築に努め、常に二人三脚で歩んでいけるようなチームを目指したいと考えています。

山梨県立中央病院_小嶋先生_図表.jpg

1) Kojima, Y. et al.:World J Gastroenterol. 2018;24(4):511-518.
2) Kobayashi, T. et al.:Lancet Gastroenterol Hepatol. 2021;6(6):429-437.
3) Colombel, J.F. et al.:N Engl J Med. 2010;362(15):1383-1395.
4) Yokoyama, Y. et al.:J Crohns Colitis. 2020;14(9):1264-1273.
 (利益相反:本研究は一部JIMROの資金提供を受けて行われた。著者の一部はJIMROの社員である。)