前任の病院から現在までも、IBDの基本的な治療方針は変わりません。『潰瘍性大腸炎・クローン病 診断基準・治療指針』1)、『炎症性腸疾患診療ガイドライン2020』2)に沿ってIBD治療を行っています。治療法を決定した後はtight control3)、そしてtreat to targetを念頭にSTRIDE4)、あるいはSTRIDE-Ⅱ5)を指標とした評価を行っています。正確な病状把握を行い、患者への十分なインフォームドコンセントとコンセンサスに基づき、最適・最善な治療選択を心掛けています。
治療の進歩と多様化によって粘膜治癒が求められるようになってきました。しかし、各臨床試験において評価指標は統一されておらず、その定義もいまだ議論が生じています。私は実臨床に際しては、STRIDEおよびSTRIDE-Ⅱに基づいた治療目標設定が望ましいと考えます。すなわち、まずはshort-termにおけるsymptomatic response、symptomatic remission、normalization of CRPです。これらに続く治療目標として、long-termにおけるendoscopic healing、normalization of QOL、absence of disabilityがあげられます。
UCの治療選択肢は増えてきているとはいえ、それでも限界があります。Treat to targetの達成のためにも、使用可能な治療方法を適確に、かつ集学的に用いる必要があり、GMAは非薬物療法として重要な位置付けにあるのではないでしょうか。特にGMAは、薬物療法が制限されるような妊婦、肺炎や結核等の感染症リスクを有する高齢者や担癌患者に対して重要な選択肢の一つになると私は考えます。
1) 厚生労働科学研究費補助金 難治性疾患等政策研究事業「難治性炎症性腸管障害に関する調査研究」(久松班):潰瘍性大腸炎・クローン病 診断基準・治療指針. 令和2年度 改訂版, 2021. 2) 日本消化器病学会 編集:炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2020, 南江堂. 3) Colombel, J.F. et al.:Gastroenterology. 2017;152(2):351-361. 4) Peyrin-Biroulet, L. et al.:Am J Gastroenterol. 2015;110(9):1324-1338. 5) Tuner, D. et al.:Gastroenterology. 2021;160(5):1570-1583. 6) Barreiro-de Acosta, M. et al.:J Crohns Colitis. 2019;10(1):13-19. 7) Yokoyama, K. et al.:Gastroenterol Res Pract. 2013;2013:192794. 8) Carvalho, P.B. et al.:J Crohns Colitis. 2016;10(1):20-25. 9) Nakarai, A. et al.:World J Gastroenterol. 2014;20(48):18367-18374. 10) Yamamoto, T. et al.:Clin Transl Gastroenterol. 2018;9(7):170. 11) Naganuma, M. et al.:J Gastroenterol. 2020;55(4):390-400.