GMAのこれまでとこれから:GMAのクリニカルパール探求
アダカラムインタビュー記事シリーズ
GMA 20年をこえる臨床知見からの提言
全国の先生方より、消化器および皮膚領域における最新の診療状況を踏まえた上で、様々な視点から顆粒球吸着療法(GMA)の日常診療における活用方法や工夫、メリットや課題についてお話いただきます。
IBD:炎症性腸疾患、UC:潰瘍性大腸炎、CD:クローン病、PP:膿疱性乾癬、PsA:乾癬性関節炎(関節症性乾癬)
※先生のご所属先および役職、治療指針等は掲載時点の情報です
兵庫医科大学におけるIBD診療の現状 当院は1972年の開院以来、阪神間地域における中核病院として高度先進医療の提供・開発を通じ、地域の健康を支えています。2009年には炎症性腸疾患(IBD)の診療を専門とするIBDセンターが開設され、内科と外科それぞれの専門医が毎日外来診療を行ってきました。現在の患者数は潰瘍性大腸炎(UC)、クローン病(CD)合わせて年間2,000名を超えています。IBD内科とIBD外科で連携し、内科的治療だけでなく、外科的介入も積極的に取り入れており、2021年の診療実績としてIBD手術数は約300件でした。
当院の患者さんは重症例や難治例の割合が高く、その背景として、内科的治療のみでは病態のコントロールが難しいと判断された症例や専門的な治療が必要とされる症例を近隣施設からご紹介いただくケースが多いことが挙げられます。IBD患者数は年々増加傾向にありますので、より効率的な診療を目指し、IBDセンターの先生方と相談しながら、今後は院内における診療状況を管理するためのデータベース構築、外来枠の増加やブースの整備など、外来診療の適正化を図っていきたいと考えています。
大学病院が担う役割と今後の展望、患者貢献を目指して 当院では「診療」だけでなく、最先端医療に関する「研究」、次世代の医師を育成する「教育」にも力を入れています。消化器疾患の診療において、より高い患者貢献を目指すため、2022年7月に消化管内科とIBD内科の2科を合併し、新生「消化管内科」として新たな体制を構築しました。これまでの良いところを活かしつつ、新たな取り組みにも挑戦していきたいと考えています。
まず、大学病院の役割の一つである若手医師の育成について、若い先生には、消化器内科医として幅広く経験を積んでいただきたいと考えています。これまではIBD内科に入局すれば、IBDに関する勉強が中心になっていましたが、今後は枠にとらわれずに消化管・肝胆膵分野・内視鏡など幅広く学び、ある程度経験を積んだ段階で自分の進む専門分野を選択してもらうのが理想です。また、当院には経験豊富なIBD専門医が多く所属しているため、IBDを学びたい若手医師の国内留学の受け入れなども、これまで通り積極的に継続していくことで、次世代を担っていく医師の成長へと繋がることに期待しています。
診療全般については、先に述べた外来診療の適正化に加えて、地域の医療機関との連携も重要と考えています。全国的にみても、IBD患者さんは軽症や寛解期であれば近隣の病院で、治療に難渋する場合は全身管理の観点から専門性の高い施設へといった、医療連携が一般的になりつつあります。現在、阪神間地域において患者さんの紹介がよりスムーズに進むよう、大学の関連施設や近隣の先生方と顔合わせを進めています。
また、IBD診療においては多職種での連携も重要となります。当院には経験豊富なIBD専門の内科医、外科医だけでなく、IBDに特化した看護師、薬剤師、栄養士、実験助手がおり、チーム医療の体制が充実しています。合同カンファレンス【図 1 】等を通して、各分野の強みを活かしながら、チーム全体をボトムアップしていくことが患者満足度の向上につながるのではないでしょうか。さらに、今後は患者さんのトランジションを考慮し、小児科との連携も図っていきたいと考えています。
IBD治療におけるGMAの意義と可能性 顆粒球吸着療法(GMA)と当院の歴史は長く、UCに対するGMAの治験1) 期間も含めると約30年以上にわたってGMAの治療経験を重ねてきました。当院においてGMAを含む血球成分除去療法(CAP)を施行されたIBD患者さんを対象に実施したアンケート2) では、CAPの安全性および有効性への満足度などを評価しており、CAPの忍容性は良好であることが示されました【図 2 】。
近年、5-アミノサリチル酸(5-ASA)製剤不耐例への対応が課題となっています。5-ASA製剤やチオプリン製剤不耐で、かつ他の免疫抑制剤の投与を躊躇するような患者さんにおいてGMAは選択肢の一つになると考えています。また、生物学的製剤(Bio)の効果減弱例に対してGMAを併用することで治療強化を図れる3) と期待しています。GMAの治療効果予測因子として、ステロイドナイーブや罹病期間が短いなどが報告4,5) されていますが、どのような症例に対してどう活用していくか、最適な位置づけが確立されれば、GMAは患者さんにとってより受け入れやすい治療選択肢になるのではないでしょうか。
GMAに限らず他の治療においても同様ですが、エビデンスの集積は非常に重要であり、未来の医療へ貢献することにも繋がります。GMAは20年以上前からIBD治療において非薬物療法としての役割を担ってきた治療法です。2022年1月からはUCの寛解維持療法としても使用可能となったことで治療選択の幅も広がりました。日本発の治療法として、今後も適切な位置づけでGMAを活用し、知見を発信していきたいと考えています。
1) 下山 孝 ほか:日本アフェレシス学会雑誌. 1999;18(1):117-131. 2) Nagase, K. et al.:Ther Apher Dial. 2013;17(5):490-497. 3) Yokoyama, Y. et al.:J Crohns Colitis. 2020;14(9):1264-1273. 4) Yokoyama, Y. et al.:Cytotherapy. 2015;17(5):680-688. 5) Yamamoto, T. et al.:Clin Transl Gastroenterol. 2018;9(7):170.